レイチェルの挑戦
レイチェルが学校と特訓の両立に慣れた頃、アレックスが言った。
「レイチェルもそろそろ一人で行動してもいい頃ね」
つまりレイチェルはひとり立ちできたという事だ。レイチェルはこれから一人でガラの悪い男たちと戦わなければいけない。
レイチェルはゴクリとツバを飲み込んだ。これまでは、レイチェルが危険な目に合いそうになればアレックスが助けに入り、レイチェルがケガをすればキティが治癒をさせてくれた。
もうアレックスとキティの助けは借りられない。レイチェル一人で切り抜けなければいけないのだ。
レイチェルは学校から帰り、特訓を終え、アレックスたちと夕食を取った後、一人でスラム街に向かった。
レイチェルは動きやすい服に着替えると、自身の身体に念動力をかけて、フワリと身体を浮かせた。
レイチェルはアパートの側に立っている木の上に着地すると、辺りを見回した。スラム街への最短距離を見定めてから、さらに跳やくする。
レイチェルはまるで飛び跳ねるカエルのように、木や建物の屋根を飛び跳ねて行った。
レイチェルがスラム街に到着したのは、十一時ごろだった。
人気はまったくなく、街灯も壊れて真っ暗だった。レイチェルは息を殺しながらゆっくりとした足取りで歩いた。
しばらくするとレイチェルに声をかける者がいた。レイチェルが振り向くと三人ガラの悪い男たちだった。
「お姉さん、こんな場所で一人で歩いていたら危ないよ?俺たちが安全なところまで送ってってやるよ」
「けっこうよ。貴方たちについて行った方が危険そうだもの」
レイチェルのキッパリとした態度に、男たちは少し驚いた顔をしたが、ふたたび猫なで声で話し出した。
「そんなつれない事言うなよ。俺たちと遊びに行こうぜ」
男の一人が馴れ馴れしくレイチェルの肩に触れようと、身体をかがめた。レイチェルは素早く左手で男の腰に手を当て、右手の手根で男のあごを押し上げた。男はさば折りの状態で止まった。
レイチェルは足を一歩踏み出し、男の頭を地面にたたきつけようとした。が、すんでのところで男の胸ぐらを掴み、アスファルトに頭をぶつけないように守った。
今日はキティがいないのだ。いくらガラの悪い男たちでも大けがをさせてはいけない。地面に大の字になった男は驚きの表情でレイチェルを見上げていた。
もう一人の男が叫び声をあげてレイチェルに殴りかかる。
「このアマ!なめたまねしやがって!」
レイチェルは素早い動きで男の間合いに入ると、殴りかかろうとする右手を持って背負い投げた。
レイチェルは度重なる訓練の結果、念動力を使わずに体術で相手を倒せるようになった。
レイチェルは男が地面に叩きつけられる直前、えりくびを掴んで男の頭を守った。
レイチェルが男たちに極力ダメージを与えないように戦っているため、男たちは無傷だ。しかもレイチェルにしてやられて怒りが頂点に達しているようだ。
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