レイチェルの腕試し2

 レイチェルが辺りを見渡すと、十人の男たちは地面に倒れていた。アレックスとキティも無事なようだ。


 レイチェルたちは勝ったのだ。レイチェルがホッとしていると、突然アレックスの大声が聞こえた。


「レイチェル!後ろ!」


 アレックスは何もない手に拳銃を出現させ、引きがねを引いた。パンッという破裂音の後、男のギャァという叫び声が聞こえた。


 レイチェルが振り向くと、男が右手を押さえてわめいている。かたわらには拳銃が。どうやらレイチェルはこの男に拳銃で狙われていたようだ。


 そこをアレックスに助けられたようだ。レイチェルがアレックスに礼を言うと、彼女は渋い顔で言った。


「レイチェル。戦闘中は決して気をゆるめない事。常に言っているでしょ?」

「はい。ごめんなさい」


 レイチェルはしょんぼりとして謝った。アレックスはため息をついてから表情をやわらげて言った。


「私たちがケガをしても、キティがすぐに治してくれる。だけどそれに甘えていたら、キティが助けられない状況になれば、私たちは死んでしまうわ。それに、頭部を撃たれた場合、私たちが元通りに治るともかぎらない。それだけは注意して?」


 レイチェルがうなだれていると、キティがレイチェルとアレックスの間に立ち、レイチェルとアレックスの手をつかんで言った。


「大丈夫だよ?どんな大ケガしたって、アレックスとレイチェルはあたしが必ず治すよ。それにさぁ、アレックス今日銃を使っちゃったね?」

「そうね。レイチェルが危険だったから」


 ニヤニヤ顔のキティに、アレックスはため息をついた。キティは我が意を得たりと口を開いた。


「アレックスは夜の腕試しの時は銃は使わないって言ってたよね?」

「そうね」

「じゃあ、あたしとレイチェルに一つ貸しだね?」

「そうね。じゃあ、レイチェルもだいぶ動けるようになったし、明日はレストランでランチにしましょう」

「やったぁ!あたしねぇ、ハンバーガーにピザに、あっ、シェイクも頼むの!」

「キティったら、そんなに食べたらお腹壊すわよ?レイチェルも何食べるか考えておいてね?」

「ええ。レストランなんて久しぶり」


 レイチェルたちは楽しそうにおしゃべりを続けた。手を血まみれにさせて、救急車を呼んでくれと叫んでいる男が転がっている状況で。


 レイチェルの感覚はだいぶ麻痺していた。

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