キティの実力

 レイチェルはキティに押し切られるかたちで、キティに攻撃する事をしょうだくしてしまった。


 うなずいてもなお、レイチェルはためらっていた。そのため、キティのほっぺたを軽く叩くように平手打ちをした。レイチェルとキティの身長差はかなりあるので、レイチェルはかがみ込むような姿勢になった。


 レイチェルの右手がキティのりんごのようなほっぺたに当たろうとした瞬間、キティは目にも止まらない速さで、レイチェルの右手を前腕ごと掴み、思いっきり小手を返した。


 レイチェルはあまりの事に、そのまま肩から地面に叩きつけられた。レイチェルが痛みにうめいていると、キティは右膝でレイチェルの胸に乗り上げ、右手のこぶしを高々とあげた。


 キティの瞳は、いつものキャンディーのようなキラキラしたものから、野生の山猫のような鋭いハンターの目に変わっていた。


 顔面をなぐられる。レイチェルは恐怖により、ヒュッと息をしようとしたが、胸を圧迫されうまく息が吸えずにケホケホとむせった。


 突然キティの目が変わる。いつもの可愛い瞳だ。


「レイチェル?大丈夫?」

「ゲホ、だ、大丈夫よ?キティ、貴女は強いのね?」


 レイチェルの感嘆の言葉に、キティは照れ臭そうに笑った。レイチェルは考えを改めた。キティはとても強い少女なのだ。


 レイチェルはキティに拳銃の指導をあおいだ。キティは木でできた台に空き缶を並べて行く。これはキティがいつも拳銃を練習している練習台らしい。


 キティは発砲音から耳を守るためのヘッドホンをし、ハンドガンを構えた。両手でしっかりと拳銃を構える。


 レイチェルに耳をふさぐように指示してから、キティは鋭い目つきで引きがねを引いた。


 ぱんぱんという破裂音にレイチェルは強く耳をふさいだ。そこでレイチェルは驚くべきものを見た。キティは正確に台の上の空き缶を撃ち抜いていたのだ。


 レイチェルがぼう然とキティの行動を見ていると、キティは拳銃の全弾を撃ち終え、ポケットからマガジンを取り出すと、流れるような動作で入れ替えてからレイチェルに拳銃のグリップを差し出した。


 レイチェルに受け取れというのだ。レイチェルはキティのあまりのカッコよさにしばしぼんやりしていた。キティは可愛くまゆねを寄せて言った。


「レイチェル、銃を持つ時は必ずセイフティレバーを確認してね?」


 セイフティレバーとは安全装置の事だ。これをしないと暴発してしまう事もあるそうだ。


 レイチェルはキティから拳銃を恐々受け取ると、もたつきながらセイフティレバーをあげた。


 キティからヘッドホンを受け取り耳に装着する。もうキティの助言は聞こえない。レイチェルはやらなければいけないのだ。


 キティが並べなおしてくれた空き缶に狙いを定める。キティの射撃を見てみると、予想よりも簡単そうだった。


 レイチェルはキティがやったように両手で拳銃を持ち、引きがねを引いた。激しい発砲音の後、ものすごい衝撃が両腕にかかり、レイチェルはそのまま後方に倒れ、したたかに頭を打った。


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