アレックスの怒り7

 その日はついにやって来た。アレックスはいつも仕事の帰り道、人気なの無い道をあえて選んで帰っていた。


 ライオン男との戦いになっても他人を巻き込まないためだ。そのためアレックスはタチの悪い男たちにつかまる事がよくあった。


 アレックスはそんな男たちを腕力でねじ伏せ、時には拳銃でおどして撃退していた。


 その日もアレックスの後をつけている者がいた。いつもの女にちょっかいをかける不良か、それとも。


 アレックスはわざと歩く速度をゆるめた。周りを確認すると大きな暗い道にアレックス一人だけだった。物陰からある人物が現れる。


 アレックスはまるで親友と再び再会したような喜びの声をあげた。


「あら、貴方だったのね?ずっと会いたかったのよ?今度こそちゃんと殺してあげる」


 物陰から現れたのは、アレックスの最愛の人たちを殺したライオン男だった。ライオン男はギャァギャァと耳障りな意味をなさない言葉を叫んでから、ナイフを振り上げ、アレックスに向かって走ってきた。


 アレックスは笑顔を崩さないまま、何も持っていない素手にショットガンを出現させると、ライオン男に向かって発砲した。

  

 アレックスの射撃の腕は、確実にライオン男の腹に打ち込まれていた。だがライオン男は速度が弱まっただけで、アレックスへの歩みを止める事はなかった。


 そうこなくっちゃ。アレックスは笑みをたやさずつぶやいた。銃弾を撃ち終えたショットガンを手から消すと、次に斧を取り出した。


 ライオン男の息の根はこの斧で奪わなければならないと決めていた。アレックスは動きの弱まったライオン男に向かって、斧を振り上げ走った。


 ライオン男はナイフを高々と持ち上げアレックスを攻撃しようとした。アレックスは斧を左手に持つと、右手にハンドガンを出現させライオン男の右手めがけて発砲した。


 アレックスの撃った銃弾は、見事ライオン男の右手を撃ち抜き、ナイフが手から落ちた。ライオン男は丸腰になったのだ。


 アレックスはハンドガンを消すと、両手で斧を持ち、ライオン男の顔面に振り下ろした。ガッと硬い感触が伝わり、ライオン男の頭蓋骨を叩き割った事を知った。


 ライオン男は仰向けに倒れた。アレックスはライオン男の顔面から斧を取り戻すと、首に狙いを定めた。前回は顔を切り刻んだだけだったから復活してしまった。今度こそ確実に殺さなければ、そのためには首を斬るしかない。


 アレックスが斧を振おうとした瞬間、ライオン男が右手でアレックスの足をはらった。おそらくアレックスの足を掴んで引き倒そうとしたのだろう。だがアレックスが拳銃でライオン男の右手を吹っ飛ばしたから、掴めなかったのだ。


 アレックスはバランスを崩して後方に倒れた。このままでは頭から落ちてしまう。アレックスは両手を頭上にあげて地面に手をつき、両手の力と全身をバネにして着地した。


 すぐさま手の中にショットガンを作り出し、起きあがろうとしているライオン男のどてっ腹に弾丸をお見舞いした。


 ライオン男は再び仰向けに倒れた。アレックスはショットガンを斧に変えると、オウッというかけ声をあげながら、ライオン男の首に振り下ろした。

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