力の特訓
「危ないじゃない!アレックス!」
「でもナイフを止められたじゃない。レイチェルは自分に危険が迫らないと力を発動できないようね。これからは常に貴女にナイフを投げるようにするわ」
「やめてよ!死んじゃうじゃない!」
「大丈夫よ。キティがいるから」
レイチェルは慌てて反対するが、アレックスはどこ吹く風だ。キティは浮いてるナイフが面白いのか、興味津々でナイフを見つめている。
レイチェルが大きなため息をつくと、ナイフはテーブルに落ちて、カシャンと音をたてた。
「わぁ!レイチェルの力面白いね!ねぇ、レイチェル。あたしを空中に浮かべてよ!そしたらピーターパンみたいに空が飛べるよ」
キティはさも楽しそうにレイチェルの手を取って引っ張った。キティを浮かせてといわれても、レイチェルにはやり方がわからなかった。
「キティ。空中に浮かせてもらうのは、レイチェルが自由に力をコントロールできるようになってからにしなさい。そうでないと高い所から落とされるわよ?」
「えぇー、早く空飛びたいなぁ。レイチェル早くできるようになってね」
レイチェルをさしおいて、アレックスとキティはどんどん話しを進めている。
レイチェルはアレックスとキティのやりとりをぼんやりと見ていた。これからはアレックスとキティと暮らすのだ。それはレイチェルにとっては願ってもない事だった。レイチェルは恐ろしい体験をして、とても精神が不安定だった。
アレックスとキティが側にいてくれれば、こんなに心強い事はない。それに、アレックスとキティはレイチェルと同じ体験をしたのだ。つまり共感し合える仲間なのだ。
レイチェルの視線に気づいたのだろう、アレックスはキティにイスに座るように促してから言った。
「さぁ、今度はキティの番よ?レイチェルに貴女の話しをしてあげて」
「うん、」
アレックスはキティに殺人鬼に襲われた時の事を話せというのだ。レイチェルは慌てた、忌まわしい過去を話す事はキティの精神に大きな負担をかけると思ったからだ。
焦るレイチェルに、キティは笑って答えた。
「大丈夫だよ?レイチェル。もう一年も前の事だもの」
キティは親から育児放棄され、孤児院で育ったという。父親は酒を飲んで暴力を振るう男で、母は浮気性でちっとも家に帰ってこなかったようだ。
キティは五歳の時に保護され、孤児院を併設している教会で暮らす事になった。
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