キティの告白
キティは孤児院に行けた事は嬉しかったという。ご飯をお腹いっぱい食べさせてもらえるし、暴力的な父親にビクビクする心配がないからだと言っていた。
キティは孤児院での出来事を楽しそうに話してくれた。孤児院にはキティと同じような境遇の子供達がたくさんいたのだ。
「あたし、メグが嫌いなの」
「メグって?」
「あたしより一個上の子なんだけど、あたしの事どんくさいっていつもいじめるの」
「そうなんだ。イヤな子ねぇ」
キティは怒った時はぷくっと頬をふくらませ、嬉しい時にはケラケラ笑いながら話してくれた。レイチェルは表情豊かなキティが可愛くって、微笑みながら聞いていた。
「だけどね、アンナは優しいの」
「アンナ?」
「うん。アンナはあたしの二個上で、お姉ちゃんみたいなの。とっても頭がよくって、あたしがメグにいじめられていると、いつも助けてくれた。それにね、あたしたちメグにし返ししたんだよ」
キティはニヤニヤ笑いながら言った。いつものようにキティがメグにいじめられて泣いていると、アンナがキティにクッキーをくれた。キティはアンナとクッキーを食べてから、このクッキーはどうしたのかと聞いた。
アンナはニヤリと笑って、食堂の棚の缶からしっけいしてきたと答えた。食堂には子供たちのおやつとして、クッキーやキャンディがたくさん缶に入っている。だが勝手におかしを食べるとマザーとシスターにすごく怒られるのだ。
キティが顔を青くしていると、アンナは笑ったまま、手に残ったクッキーのくずを見せた。キティの手のひらのクッキーのくずもここにのせろというのだ。
キティはわけがわからず言われた通りにすると、アンナはメグの部屋に忍びこみ、メグが使っているカバンの中にクッキーのくずを入れた。
後日マザーが子供たちに言った。この中で缶からクッキーを盗んだ者がいます、と。キティは真っ青になって黙っていた。
マザーは誰も名乗り出ない事に怒って、子供たちにカバンを持ってくるように指示した。子供たちは自分が使っているカバンをマザーに渡すと、マザーはカバンを逆さまにして中の物を出した。
教科書、ノート、ふでばこ、ハンカチ、色々な物が出て来た。ついにメグの番になった。メグはすました顔でマザーにカバンを差し出した。マザーがメグのカバンを逆さまにすると、ノートとふでばこの他に、パラパラとクッキーくずが出てきた。
マザーはメグに烈火のごとく怒った。何も知らないメグは、自分はやってないと泣いていた。
キティはちょっとやりすぎたなと思ったが、アンナは小声でキティに言った。
「人にやったおこないは、必ず自分に返ってくる。メグはキティを泣かせたから、メグはマザーに泣かされた」
キティはそういうものかとうなずいた。
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