レイチェルの告白5
そこまで話して、レイチェルはグッと息を飲んだ。涙が出そうになってしまったからだ。
レイチェルはテーブルにこぶしをついて、必死に耐えた。ふと両手のこぶしがあたたかくなった。レイチェルが顔をあげると、アレックスがレイチェルの右手をぎゅっと掴んでいた。左手はキティが小さな両手で包み込んでいた。
二人の体温を感じた瞬間、レイチェルはわんわんと泣き出してしまった。アレックスとキティは、レイチェルが落ち着くまでジッと待っていてくれた。
「ごめんね、もう大丈夫。私って最低。親友を置いて逃げるなんて」
わざとおどけたように笑って言うレイチェルに、アレックスは真剣な表情で答えた。
「いいえ、それは違うわレイチェル。エイミーはね、レイチェルを助けるために自らを犠牲にしたの。レイチェル、貴女はエイミーの気持ちをしっかり受け止めなさい」
レイチェルはアレックスの言葉を黙って聞いていた。レイチェルはエイミーの気持ちを考えようとしたが、どうしてもできなかった。レイチェルは怖かったのだ。エイミーが自分のせいで死んでしまったと認めるのが。
レイチェルは羊男が崖から転落した後、ぼんやりと朝日が昇るまでその場にしゃがみ込んでいた。辺りが明るくなってから、レイチェルはのっそりと起き上がった。逃げているうちにシューズが脱げてしまったようで、レイチェルは裸足だった。レイチェルは裸足のまま車で来た道を歩いて行った。
ロッジに入れば携帯電話と荷物があるはずだ。それなのにレイチェルはロッジに入る事を無意識に避けた。
レイチェルはひたすらまっすぐなハイウェイを歩き続けた。日が上り、アスファルトが熱を吸収し、レイチェルの足の裏を容赦なく焼いた。レイチェルはこれを罰だと考えた。自分だけが生き残ってしまった罰なのだと。
日が傾きかけた頃ようやく行きに立ち寄ったガソリンスタンドにたどり着いた。ガソリンスタンドには古びた公衆電話があった。
レイチェルはポケットから硬貨を取り出し、公衆電話に入れた。スーパマーケットで買い物した時の釣り銭を入れたままにしておいたのだ。
レイチェルは警察に電話し、ロッジで事件が起きた事を告げた。警察が来てくれると答えた途端に安心してしまい、その場で意識を失った。次に目を覚ましたのは病院で、意識が戻ったのと同時に警察に連れて行かれた。
その後は、アレックスが来るまでずっと警察の事情聴取を受けていた。
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