レイチェルの告白
レイチェルが一口ココアを飲んだのを見計らって、アレックスは声をかけた。
「レイチェル。疲れていると思うけど、先に話しておいた方がいいと思う。私もここにいるキティも、貴女と同じ。殺人事件に巻き込まれて生き残ったの」
アレックスの言葉にレイチェルは息を飲んだ。アレックスだけではなく、この小さなキティも殺人事件に巻き込まれたのだ。レイチェルですら恐怖で気がおかしくなりそうなのに、キティも同じ体験をしたのだと思うと、胸が張り裂けそうなほど痛んだ。
レイチェルが黙りこくってしまったので、アレックスは心配そうにレイチェルの顔をのぞきこんだ。レイチェルは心配いらないと笑った。アレックスはうなずくと、言いにくそうに提案した。
「レイチェル。辛いと思うけど、私たちに、どうして殺人現場となったロッジに行ったのか話してくれない?」
あのロッジで起きた事を話す。すなわち、あの忌まわしい記憶を再び思い出さなければいけない。レイチェルはゴクリとツバを飲み込んでから、乾いてしまったくちびるをなめてから話し出した。
「最初言い出したのはリンダだったの」
「リンダ?レイチェルの友達?」
レイチェルのあまり上手ではない説明に、アレックスが話しやすいように質問してくれる。
「うん。だけどあまり親しいってわけじゃないの。どちらかというと苦手なタイプかな。美人でお金持ちなんだけど、人を見下す感じがして。私なんかは孤児だから、あからさまに下に見られてた感じだった」
「ひどい!何て奴なの!」
素直なキティは我が事のように怒ってくれた。アレックスはキティのくせっ毛の髪の毛を優しくすいてから言った。
「ならレイチェル。どうしてリンダと一緒にロッジに泊まりに行ったの?」
レイチェルはエヘヘと笑って、自身の頭をかいた。
「私ね、気になる男の子がいたの。マイケルっていって、フットボールの選手なの。だけどちっとも汗くさくないのよ?ハンサムでさわやかで。リンダが言ったの、ロッジに泊まりに来ないかって。私の耳元で、マイケルも来るよって。リンダのパパは大きな会社の社長で、色んな所から招待状が来るんだって。ロッジの宿泊も、その中の一つだったの。私は最初ちゅうちょしたわ。何で私を誘うの、たいして親しくもないのにって。何か裏がありそうって。だけどエイミーが行こうって言ったの。エイミー、私がマイケルが気になっている事を知ってたから」
「リンダの父親が招待されたロッジだったのね」
レイチェルの脈絡のない話しに、アレックスはところどころうなずいている。キティはココアを飲み切ってしまい、おかわりと騒いでいる。
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