第8話

三花を突き飛ばしたのは,黄花だった。

三花の目はまん丸に開かれる。

「そんなっ!黄花!」

三花は黄花のキュロットの裾を掴む。

けれど黄花は,三花の手を離した。

そして人差し指を口に当てて静かに,のハンドサイン。

三花が黙ると,黄花は凛としてよく響く声で叫んだ。

「ボクは星の子だ!捕えられるものなら,捕えてみろ!」

黄花の胸元で光るネックレス。

それを見て,敵はにんまりと笑った。

「あのネックレスは…!おいっ!こいつを捕まえたら闇はさらに深まるぞ!」

おーっと叫ぶ敵。

「三花。逃げて」

黄花は小さく呟いて,三花たちとは反対方向へ走っていく。

それに続いて敵たちも反対方向へ走っていった。

黄花の行動は,全て仲間を守るため。

「そんなっ!黄花!黄花!」

追いかけようとする三花を,真帆子と心が取り押さえる。

「きかぁっ!きかぁっ!や、やめてよぉっ!きかぁっ!う,うわァァッっっん!!」三花の悲痛な叫び声だけが,中庭に響く。三花のワンピースの明るいオレンジ色に,涙が広がって,暗いオレンジになっていく。みんな,何も言わない。

「きかっ!きかぁっ!」

こうして三花たちの大切な親友,黄花が失われてしまった。


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