第9話

「きかぁっ!きかぁっ!」

泣きじゃくる三花から,みんな思わず目を逸らしてしまう。

自分たちも,胸が張り裂けるくらい,苦しかったから。

悲しかったから。

「黄花…」

ヒカリはくちびるを噛み締めて,親友の名前を呟いた。

落ちてきてからずっと尊敬していた黄花。そして,好きな人。

グッと心臓のあたりを抑える。

こうでもしないと,胸が張り裂けそうだ。

その時,暗い声が響いた。

「バカじゃないの…」

みんな驚いてその声を発した人物を見る。

それは,かんなだった。

かんなは俯いたまま,もう一度。

「バカみたい…」

と呟いた。

「かんな。どういうこと?説明して」

真帆子は少しイラついた様子だった。

「そうだ。説明しろ」

心もいつもよりピリピリしている。

「言葉の通りよ。みんな…バカだもの」

かんなの目から1粒の涙がこぼれ落ちた。

「みんなバカ!だっておかしいでしょ!?」

「おかしい…?」

三花は掠れた声でつぶやく。

「だってそうじゃない!みんな泣いたり落ち込んだりして,何にもしてないじゃない!」

「だって,黄花が私のせいで捕まっちゃったんだもん!」

もう1度泣き出す三花の頬を,かんなはぱしんと叩いた。

「だから何よ!泣いてばかりじゃ変わんないじゃない!今1番にやることは,どうやって助けるかじゃないの⁉︎」

みんな,驚いたように硬直した。

中庭にかんなの声が響く。

「もうイヤなのよ…こうしているうちに,仲間がどうなるのかがわからない…わたしは,私たちは…黄花を助けるためにも,立ちあがりましょうよ!」

もう会えないわけじゃないんだからさぁっ!かんなの言葉が,三花に響いた。

「三花…こんなの…大吉じゃないじゃん…みんなで大吉…作るんじゃなかったの…?」

「かんな…」

三花の肩を,真帆子が優しく叩いた。

「ありがとう…みんな…」

三花は涙を拭いて立ち上がる。

「よし。行こう…黄花はきっと屋上にいる」

三花はそう言った後,かんなに向き直った。

「ありがとう…かんな」

その言葉に,かんなは優しく頷いた。

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