第5話

「里組先輩って,あのちょー美形の?」

真帆子の質問に,優奈は頷く。

そして自慢げに胸を張る。

「うん!あの里組先輩!実はね,あの里組先輩って,黄花ちゃん狙い…なんだって」

ヒューっ

部屋がびっくりするほど静かになる。

「はぁぁぁっぁぁっ⁉︎りりり里組先輩が,黄花をっ⁉︎」

三花のように声は出さずとも,他のみんなも目をまん丸に見開いて,黙々と問題集を解く黄花を凝視する。

「え?なんか言った?」

その発言に,三花たちは一気にずっこけた。


「ふぅん。そのりくみっていう先輩がボクをねぇ」

「え?黄花,里組先輩知らない?」

優奈の言葉に黄花は頷く。

そして黄花は優奈が喋った里組の話を聞いても落ち着いたまま,レモンソーダを飲んでいる。

それを見た優奈が不思議そうな顔で黄花を覗き込んだ。

「あれ?黄花,それ何?レモンソーダだ!わたしも好きだよ!あの自販機で売ってるやつ。ふーん。それも美味しそう。一口ちょうだい」

「待って,自販機で売ってるのって,果汁30%。甘味料入りのやつじゃ…」

「うん。でも甘くてさー。別の探してたんだよねー」

優奈に紙パックを差し出す黄花。それを受け取る優奈。とめようとするみんな。

もう枕に身を預けて寝ている花音。

すべてがスローモーションのようにみえる。

ゴクッ。

「–−‼︎」

三花や真帆子,子野葉にかんな,そして優奈が声にならない悲鳴を上げた。


優奈と花音が帰り,みんながもう眠る準備をしてる。

「ねぇ,あのレモンソーダ,そんなに酸っぱいかな?」

黄花は歯磨きをしながら横で髪をといている,三花に尋ねた。

「酸っぱいよー!優奈,死ぬかと思ったって言ってたし」

黄花はあはは,と苦笑い。あの後優奈は部屋にあったクッキー,ココア,キャンディーを食べまくったのだ。

そして寝ている花音を起こしてまでの大騒動。

「よし。もう眠ろう」

みんなでベットに着く。

その日の夜,何かに襲われている黄花を,三花は夢で見た。

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