第3話
キーコ。キーコ。
学園内の公園のブランコをこぐ音が響く。
「疲れたー。たいようけいわくせいって,覚えるの難しいんだよねー」
三花がブランコを思いっきりこぎながら天に向かって叫ぶ。
それを隣で見ていた黄花が,呆れた顔で自分の飲んでいたレモンソーダを公園の机に置いた。
「三花,まだ4つしか勉強してないのに…」
「そうだよ。三花。宿題もあるし,予習よりも復習した方がいいんじゃない?」
黄花と心に言われて,三花はガックリ。
「まぁ,子野葉も苦戦したでしょ?きょうのとこ」
助けを求める三花に,子野葉は自慢げに笑った。
「えっへへ。子野はね,もう終わったんだよ〜。水星,金星,地球,火星でしょ?」
「そ、そんなぁ」
三花達は仲がいい。いつも9人で活動している。
三花,黄花,ヒカリ,心,けんた,けんじ,かんな,真帆子,子野葉。
性格もタイプも違うが,とても仲が良かった。
「あ,黄花,まだそれ飲んでたんだ」
真帆子の発言に,全員の目が黄花の飲んでいるレモンソーダに集まる。
「あぁ〜これね。昔,みんなで回し飲みしてみたら酸っぱすぎて黄花以外甘いものをめっちゃ食べまくる羽目になったやつ」
子野葉が懐かしそうに呟くと,けんたがブルリと体を震わせた。
「あれは酸っぱかったわ。うぅ。思い出すだけでも…」
ソーダのパックには,果汁100%,甘味料なし!と,でっかく書かれている。
けど,黄花は気にせずソーダを飲む。
そしてみんなをみわたした。
「そう?そんなに酸っぱい?」
「「「「「「「「酸っぱいよ‼︎」」」」」」」」
黄花以外の声が見事にハモる。
「うわっ!」
黄花も,その声に押されて,少し身を引いた。
「なんでここは揃うのよ。がっしょうはっぴょうかいではまったくそろわなかったのに」
かんなは呆れた様子で呟く。
「あ〜あったね〜。私たちの個性が強すぎて,1人1人の声が全く揃ってなかったの」
三花と心も思い出したかのように目を細めた。
全員が独特の声で歌ってしまった合唱発表会。
黄花はめちゃくちゃうまいし,三花と心は下手すぎる。
真帆子はオペラのような歌声を披露し,子野葉はアップテンポで歌う。
けんたとけんじは低すぎ。かんなは高すぎ。ヒカリはなんか普通。
個性強すぎてみんなに笑われてしまったのだ。
「ねぇねぇっ!」
みんなで思い出に浸っていると,子野葉が手をあげた。
「昔みたいに鬼ごっこしようよ!」
「いいね!」
みんなが頷く。
「じゃあ代わり鬼で,ボクが鬼ね!」
「じゃあ黄花!10秒待ってね!」
黄花がカウントを始めると,一斉にみんなが逃げ出して,黄花はニコッと笑った。
「やっぱり,息ぴったり。あっ!もう10秒経ってる!」
黄花は走り出す。
「みんなーっ!いくよーっ!」
タンッと黒いスニーカーが軽快な音を立てた。
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