パティの誓い

 パティはトグサの提案にポカンと口を開けたまま黙ってしまった。トグサはパティとマックスたちに、仲間になろうと言ってくれたのだ。


 パティは胸がギュッと熱くなった。嬉しい。パティの胸にきょらいした感情は、大きな喜びだ。


 これまで他人に煙たがられ、さげすまれていた自分に、居場所をあたえてくれるというのだ。


 パティはトグサの提案にすぐさま飛びつきたかった。膝の上のバッグから顔をのぞかせているマックスたちと、肩に乗っているピンキーがジッとパティを見ている。


 パティはマックスたちとピンキーに微笑んでから、真剣な表情で答えた。


「トグサさん、皆さん。私たちが皆さんの仲間になれたら、とても嬉しいです。私もマックスたちもトグサさんたちが大好きです。だけど、私は皆さんと肩を並べられるほど強くありません。山道を歩けばすぐに疲れて歩けなくなってしまう。戦闘になれば加勢どころか足手まといになってしまう」


 パティの言葉に、デイジーが声をはさもうとしたが、トグサか無言でデイジーをとめた。パティは一呼吸おいてから言葉を続けた。


「私とマックスたちは、冒険者になりたてのひよっこです。私たちは、少しずつ皆さんに追いついていきたいんです。山道だって疲れないようになりたい。それに私、剣だって使えるようになりたい」


 パティの言葉にデイジーが顔を輝かせて言った。


「それなら、あたしが剣をパティに教えてあげるよ!」

「ありがとう、デイジー。だけど私の場合、剣を教わる以前の問題だわ。わたしは冒険者になるために、マックスたちとたくさん魔法の練習をしたの。マックスたちはとても上手に魔法が使えるようになったわ。だけど私は山道を歩くにも息がきれてしまう。私は自分自身の鍛練をしてこなかったんです」


 それまで黙って聞いていたトグサが口を開いた。


「パティは、アンチ魔法と精神操作系の魔法を心配しているんだね?」


 パティはハッとした表情になってからうなずいた。まさにトグサの言う通りだ。パティの友達であるマックス、チャーミー、ピンキー、アクアは火、土、風、水のエレメントの魔法を使う事ができる。


 パティはマックスたちと一緒にいれば、どんな困難に直面しても大丈夫だと考えていた。だが現実は厳しいものだった。


 もしアンチ魔法の敵と戦った時、マックスたちの魔法は役にはたたないのだ。メグリダのような精神操作の魔法を使う敵が相手でも難しい。


 もしパティがメグリダに操られてしまったら、マックスたちはメグリダに操られているパティの指示を聞いてしまうからだ。


 トグサは一つうなずいてから答えた。


「私はパティとマックスとチャーミーとピンキーとアクアのパーティはどんな敵とも戦えると考えている。パティ、マックス、チャーミー、ピンキー、アクア。君たちはとてもかたい絆で結ばれている。だがパティを心配するあまりパティの側に固まってしまうのが一番危険だ。だからどんな状況でもパティを守れるように、陣形を常に意識してほしいと思う」

「陣形、ですか?」


 パティはトグサの言葉を復唱した。パティの肩にとまっているピンキーと、パティの膝の上にいるマックスたちはトグサの話しに真剣に耳をかたむけていた。

 



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