決戦5

 パティは身体がブルブル震え出した。パティだとて、誰かが傷つくのを見るのは嫌だ。だがまったく知らない人間と、共に生活をし心を通わせた人間のどちらかを選べといわれれば、パティは迷わずデイジーたちの安全を願ってしまう。


 たとえデイジーたちが相手を傷つけたとしても。パティの気持ちを察したトグサは、パティの肩に優しく手を置いた。


「大丈夫だよパティ。エリオたちは必ず勝つ」

「・・・、はい」


 エリオと盗賊の大男は槍と剣で激しく戦っていた。槍は剣よりも長さがあるため、盗賊の大男は戦いにくそうだった。槍と剣の戦いでは、圧倒的に槍が有利にみえがちだが、槍の間合いに入られてしまえば、大変危険だ。


 大男は槍の先にある刃を敬遠し、注意しながらエリオの間合いに入ろうとしている。


 エリオは大男の剣を、槍の穂先で器用にさばいている。だがここでエリオがミスをした。


 大男の剣を受けそこねたのだ。大男はエリオの槍の穂先をはじくと、にやりと笑って間合いに入り、剣を高く振り上げた。このままではエリオが剣で頭をかち割られてしまう。


 パティはキャアッと悲鳴をあげた。パティがエリオの表情を見ると、エリオは恐怖におののいてもいなければ、驚いてもいなかった。むしろ余裕の笑みを浮かべているようにも見えた。


 後一歩で大男の剣が、エリオの頭に振り下ろされようとした時、エリオは槍を持ち変えてクルリと一回転させた。


 槍の尻である石突きが前になり、大男の脳天に勢いよく振り下ろされた。大男は頭を強打されて気絶してしまった。エリオが盗賊の大男に勝利したのだ。


 エリオは勝利にひたる事なく、すぐさまデイジーに加勢を始めた。もう一人の大男の盗賊は、デイジーと剣をまじえながら、コジモの弓を警戒し、さらに槍使いのエリオが増えてしまってぶが悪くなったのだろう。


 大声でアンチ魔法の小男に叫んだ。お前も加勢しろ、と。小男は舌打ちをしてから剣を構えなおし、剣で押し合っているデイジーに斬りかかろうとした。


 すかさずエリオがデイジーをかばうように立ちふさがり、槍で小男の剣をほんろうする。


 どうやら小男は剣はそれほど達者ではないとみえて、エリオにすぐさま制圧される。


 小男が剣をふるっている間は、アンチ魔法を使用できないらしく、デイジーの発動した《フラワー》のバラのツタに拘束されて転がされてしまった。


 最後に残された大男の盗賊は、叫び声をあげながらデイジーに向かってかけだした。冷静さを失った相手など、デイジーの敵ではなかった。


 デイジーは美しい剣さばきで、大男の剣をはねのけ、大男の首に剣先を押し付けた。


 大男は膝をつき、両手をあげて降参に意をしめした。


 



 

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