決戦4

 パティとデイジーを乗せたチャーミーは、風のような速さで駆けている。横を並走するようにトグサたちを乗せたマックスが走る。


 頭上を見上げれば、巨大なピンキーがパティたちを導くように飛んでいる。しばらく走ると、パティたちの目の前に三人の男たちが立ちはだかっていた。ピンキーに乗ったエリオが叫ぶ。


「こいつらはメグリダを守る精鋭たちだ!さっきの連中とは違うぞ!」


 トグサはマックスの背から降りて目の前の男たちを見て言った。


「確かにこの者たちはそれまでの盗賊と違う。真ん中の背の小さい男の魔法はアンチ魔法だ」

「アンチ魔法?」


 パティは小さい男の魔法が何なのかわからなくて、トグサに質問した。トグサは余裕の表情を浮かべる三人の男たちから視線を外さず答えた。


「小さな男の魔法は、私たちの魔法を遮断してしまうんだ」

「つまり、あの男の前では魔法は使えない」

「ああ、そうだ。パティ、マックスたちをさがらせてくれ。ここはエリオたちに任せよう」


 いつの間にかエリオを乗せていたピンキーが、元の大きさに戻ってパティの肩にとまった。


 パティたちをかばうように、エリオ、デイジー、コジモが三人の男たちとにらみあっている。パティはエリオたちが危険なのではないかと思い、不安そうトグサを見上げた。トグサはパティの表情を読んだのか、笑顔を向けて言った。


「大丈夫だよ、パティ。エリオたちはとても強いから。さぁ、もっとさがって」


 トグサは、元の大きさに戻ったマックスとチャーミー、コジモから手渡されたアクアと共に後ろにさがった。


 エリオは腰にさしていた五十センチくらいの鉄の棒を一振りすると、長い槍になった。デイジーは腰のさやから剣を抜き、コジモは背中から弓を持ち、矢をつがえた。


 目の前の男たちは皆剣を構えている。パティは自分がふるえているのがわかった。トグサの話では、目の前の三人は剣の手練れだという。エリオたちの強さを信じていないわけではないが、エリオたちが傷ついてしまうのではないかと怖かったのだ。


 お互いにらみあっていた者たちが、ハァッというかけ声とともに、戦いを始めた。小さな男の両どなりにいる大男たちは、エリオとデイジーに向かって剣を振り上げた。


 エリオは長い槍を使って、剣を持っった相手を間合いに近づけさせなかった。デイジーはもう一人の大男と剣交えたが、すぐさま剣をずらして相手の剣を流し、目にも止まらない速さで、何度も相手に剣を打ち込んだ。


 小さな男はコジモに狙いを定め斬りかかろうとするが、エリオが槍を前後に振って、小さな男の動きをはばむので、コジモには近づけなかった。


 コジモは大男たちの足元に的確に弓をはなち、エリオとデイジーのフォローをした。


 素人のパティから見ても、エリオたちの戦いは、息の合ったものだった。だがパティには一つ気になる事があった。エリオたちは守りの戦いをするだけで、盗賊たちに致命傷を与える事をさけているように見えた。


 コジモの弓は的確で、盗賊たちの身体に矢を打つ事は容易に思えた。だがコジモは盗賊たちの足元を狙うばかりだった。




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