決戦3

 パティたちのいる平地を取り囲むように、森の木々が生い茂っている。その森から剣を振り上げた男たちが一斉に押し寄せてくる。


 ついに盗賊団との戦いが始まったのだ。パティはチャーミーにお願いと言った。チャーミーはライオンほどの大きさになり、パティとデイジーを乗せてくれた。


 エリオが肩に乗ったピンキーに頼むというと、ピンキーは大きくなり、エリオを乗せて大空に飛び立った。


 トグサがマックスに声をかけると、マックスは馬ほどの大きさになってトグサを乗せてくれた。


 コジモは真っ青な顔のまま、両手のひらの上にアクアを乗せていた。アクアはコジモに、しきりに大丈夫だと言っているが、緊張ぎみのコジモは聞こえていないようだ。


 盗賊団たちは、片手に剣を持ちながら、みずからの攻撃魔法を発動させた。火を使う者、水で攻撃する者、風をおこして戦う者、鉱物の刃を出して戦う者。


 つったっているコジモに、盗賊の炎の攻撃が当たりそうになった途端、アクアが水防御ドームを発動させて、コジモを守った。


 チャーミーに乗って辺りに注意していたパティはホッと息を吐いた。パティの後ろに乗っているデイジーが大声で叫ぶ。


「コジモ!しっかりして!貴方がやってくれなきゃ、あたしが動けないじゃない!」


 デイジーの鼓舞に、気弱だったコジモの顔が緊張にこわばった。


 コジモは左手のひらにアクアを乗せると、右手を広げて盗賊たちの前に突き出した。


「止まれ!」


 盗賊たちは、まるで時間が止まったように、その場で動きを止めた。コジモの《コマンド》が成功したのだ。コジモはよほど嬉しかったのか、やったと大声をあげていた。


 パティの後ろに乗っていたデイジーは、片手でパティの腰を抱きながら、左手を突き出した。すると動けないでいる盗賊たちの身体に、バラのツルがぐるぐると巻きついた。


 コジモとデイジーの魔法で、盗賊団を拘束してしまったのだ。自分の魔法を過信し、個人で戦う盗賊たちに対して、コジモとデイジーは息の合ったコンビネーションで戦っているのだ。パティは嬉しくなって叫んだ。


「キャァ!デイジー、コジモさんすごい!」

「ええ。ここにいる奴ら、全員捕まえてやるんだから!」


 パティの後ろにいるデイジーが声を弾ませて答えた。コジモとデイジーは次々と盗賊団の動きを止め、拘束していく。


 あらかたの盗賊団を捕縛してから、盗賊団たちに動きがあった。デイジーたちの魔法ではぶが悪いと思ったのか、退却する盗賊団が現れたのだ。


 その時頭上から声がした。エリオの声だ。


「見つけた!メグリダはここから一キロ先の森に隠れてる!」


 パティとデイジーはハッとして顔を見合わせた。マックスに乗ったトグサは、コジモとアクアにマックスの背中に乗るように指示した。


 パティたちはエリオが指さす方向に走り出した。

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