決戦

「パティ、朝よ?起きて」


 パティは優しい声に起こされて、眠い目を無理矢理開いた。パティの側にマックスはおらず、パティの上には毛布がかけられていた。


 パティが身体を起こすと、笑顔のデイジーが馬車の中にいた。


「デイジー、おはようございます。ごめんなさい、ぐっすり寝てしまって。デイジーたちはずっと魔法の特訓をしていたの?」

「ええ。チャーミーが付きっきりで教えてくれたから」

「疲れてない?」

「ええ、大丈夫よ。マックスたちが回復魔法をしてくれたから」


 パティがデイジーに連れられて馬車から降りると、トグサたちが朝のあいさつをしてくれた。


 マックスとチャーミーがパティの側に駆け寄り、ピンキーがパティの肩にとまった。コジモがアクアをパティの手に乗せてくれた。パティは友達の皆にもおはようと言った。


「パティ、見て見て?あたしの魔法、とっても向上したんだから」


 デイジーが地面に手をかざすと、地面からぴょこぴょこ植物が生えてきた。やがて、真っ赤でツヤツヤのいちごが育った。


 デイジーはいちごの一つを摘むと、パティに手渡してくれた。パティはいちごを食べて驚いた。


「わぁっ!とっても甘い!」

「えへへ、そうでしょう。チャーミーに魔法の特訓を受けたら、あたしの作る果物もとってもおいしくなったの!」


 デイジーはいちごの他にもりんごやバナナも作ってくれた。パティたちは朝食がわりにデイジーの作ってくれた果物を食べた。


 マックスたちと馬車の馬は、チャーミーの作った野菜を食べている。トグサは意識を取り戻したイエーリにも果物をすすめた。もちろんイエーリが逃げ出さないように足は縄でぐるぐる巻きにしている。


 イエーリは果物なんて食べられるかと騒いでいたが、昨日から食事をとっていなかったため、ものすごい勢いで食べていた。


 トグサはパティたちが食事を終えたのを見はからって口を開いた。


「私たちはこれからグリュウ盗賊団と戦う。グリュウ盗賊団は、リーダーのメグリダが率いる六十人もの盗賊団だ。団員は皆強力な攻撃魔法を使う。だが恐れる事はない、グリュウ盗賊団はリーダーのメグリダを生け捕ってしまえば瓦解してしまう集団なのだ」

「ねぇ、トグサ。それはどういう意味?」


 コジモがいまだにりんごをかじりながらトグサに質問した。


「ああ。それは奴の魔法が関係している。メグリダの魔法カリスマは、どんな無法者な連中でも服従させてしまう魔法なのだ。この戦いはチェスと同じだ。リーダーのメグリダさえおさえてしまえばチェックメイトだ」


 トグサの言葉に、パティたちは勇気が湧いてきた。圧倒的な人数の敵に勝てる見込みが出てきたからだ。


 

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