魔法の特訓2

 パティは次にコジモとアクアの所に行った。コジモはアクアを手のひらに乗せて困惑した表情だ。コジモとアクアの周りには、たくさんの水のかたまりが浮遊している。アクアの水魔法だ。


 コジモはパティの顔を見ると、泣きそうな表情で言った。


「パティ~。アクアがプクプク言っているんだけど、何を言ってるのかわからないんだ」


 パティはアクアに顔を近づけて、フンフンと話を聞いて口を開いた。


「アクアは周りに浮いている水のかたまりは生物と同じだって言っています。コジモさんは、この水のかたまりを感知しなければいけないと言ってます」

「何だって?!そんな事できないよ!」

「大丈夫ですよ。コジモさんは、魔法の《コマンド》を使用する時、無意識に生物の水分を感知して魔法を使っているんだそうです。今から《コマンド》の魔法を使ってみてください」

「対象者がいないのに?わかったよ」


 コジモはぶつぶつ言いながら目をつむった。しばらくして目を開くと、顔をしかめて言った。


「よく、わからない」

「では、私が動いてみます。私という人間も、水分のかたまりなんです。私と空中に浮遊している水分のかたまりの違いを見つけてください」


 パティの提案に、コジモは不安そうにうなずき、再び目をつむった。パティは水のかたまりがフワフワと浮く中、トコトコと辺りを歩き回った。突然コジモが声をあげた。


「あっ!わかるぞ!今パティは僕の右側を歩いたろ?!」

「・・・。コジモさん。私の足音で判断しないでください。私は水のかたまり。周りの水のかたまりと一緒です。だけど、私は動く事ができます。耳を研ぎすませるのではありません。魔法を研ぎすませるのです」


 パティは辛抱強く、コジモの周りを歩いたり止まったりした。しばらくするとコジモの動きがピタリと止まった。何かコツを掴んだのかと思い、パティがコジモの顔を覗き込むと、何と立ったまま寝ていた。


 怒ったアクアは、空中に浮いている水のかたまりの一つをコジモの頭に落とした。


 パティは、驚いたコジモが手に乗せているアクアを落とすのではないかと心配になった。アクアをキャッチしようと駆け寄ろうとすると、コジモはアクアをしっかり手に乗せたまま、パチリと目を開いて言った。


「ごめん、寝てた。だけどわかった。生き物を水のかたまりとして認識する事」


 どうやらコジモは魔法のコツを掴んだようだ。パティはコジモに実際に《コマンド》の魔法をかけてほしいと頼んだか、コジモはためらった。


「嫌だよ。パティにそんな事できないよ」

「コジモさん、私なら大丈夫。せっかくコツを掴んだんだもの。早くじっせんしてみてください」


 コジモはしぶしぶといったかたちで、パティに魔法をかけた。


「止まれ」


 パティの身体は一瞬にして動きを止めた。まるで、見えない水の中に入れられているかのようだ。パティか苦しいと感じたのはごくわずかな時間で、コジモはすぐに魔法を解いてパティに駆け寄った。


「パティ、大丈夫?」

「大丈夫ですよ、コジモさん。コジモさんは気が弱いんじゃないんですね。コジモさんは優しいんです。だから魔法をかける時にためらってしまうんですね」


 パティの言葉に、コジモは照れたように顔を赤くした。

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