トグサの判断

 トグサは苦虫を噛みつぶしたような顔になって吐き出すように言った。


「皆、すまない。私がもっと早く《トゥルース》を使っていたら、イエーリの悪知恵に気づいたものを」

「大丈夫だトグサ。それよりも俺たちがしなければいけない事をしよう」


 うなだれるトグサの肩にエリオが手を置いて笑った。しなければいけない事とはなんだろう。マックスから降りたパティはかたずを飲んでことの成り行きを見守った。


 デイジーがすまなそうな顔でパティに言った。


「パティ、ごめんね?安全は冒険だと思って同行させたけど、危険な目にあわせてしまったわ」


 パティはデイジーの言葉に、ブンブンと顔を振って否定した。デイジーは困ったような笑顔になって言った。


「いい?パティ。よく聞いて。これからマックスに乗って王都に帰るの。そしてこの事を騎士団に伝えて?道はあたしたちが作るわ」


 デイジーたちはパティを逃すために、この場で盗賊たちと戦うつもりなのだ。

三十人対四人では勝敗は歴然だ。パティは悲鳴のような声をあげた。


「嫌です!私たちも一緒に戦います!」

  

 肩をいからせて拒否するパティの背中に温かい手がそえられる。パティが後ろを振り向くとトグサが微笑んでいた。


「パティ、言う事を聞いてくれ。私たち先輩冒険者は、新人冒険者のパティを守る責任があるのだ」


 パティは泣き叫びたくなった。トグサたちはパティを逃すために死を覚悟しているのだ。パティがなおも言いすがろうとすると、ガサガサと草分ける音と共に、ガラの悪い男どもがパティたちの周りを囲んだ。


 エリオたちは戦闘態勢を取った。エリオは槍を握り、デイジーは剣を抜いて構える。コジモは弓に矢をつがえ、いつでも矢をいる態勢になった。


 剣が苦手だと言っていたトグサも剣を抜いて構えて叫んだ。


「皆、準備はいいか?!これからパティたちの道を作る!」


 トグサのげきに仲間たちは呼応する。パティはぼう然と先輩冒険者たちを見つめた。


 パティたちを囲む盗賊たちは剣を抜き、怒号をあげ一斉に駆け寄って来た。


 パティは心臓がバクバクしだした。これから戦闘が始まる。冒険者を志した以上、危険な目にあう事は覚悟していたはずだ。


 だがパティは自分の覚悟が、形をともなわないぼやけたものだった事を認めざるをえかなかった。


 マックスとチャーミーはしきりにパティを見上げ、ピンキーはパティの肩にとまり、アクアはショルダーバッグから顔を出していた。


 皆パティにどうすればいい、と聞いているのだ。パティは乾いたくちびるをなめてから静かに言った。


「皆、お願い。力を貸して」




 

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