依頼人
パティたちは宿屋の下の酒場で朝食を食べると、依頼人のいる城下町の入り口に向かった。
パティたちが一時間ほど待った後、小さな馬車がパティたちの前にとまった。馬車にはやせた目つきの悪い男が乗っていた。
「お前たちか?わしの護衛という奴らは」
「はい、イエーリさまですね。目的の街まで我々が安全にお連れします」
偉そうな依頼人に対してトグサは丁寧に対応をした。依頼人のイエーリは、パティたちを一べつすると、吐き捨てるように言った。
「ふん、どいつもこいつも役に立たなそうな連中だ。しっかりわしを守るのだぞ?」
イエーリの言葉にパティは腹が立った。横に立つデイジーも悔しそうに顔をゆがめた。パティとデイジーの不機嫌に気づいたのだろう。エリオが苦笑しながら言った。
「仕方ないだろ?俺たちがレベルの低い冒険者パーティーなのは事実だ。さぁ、仕事だ!」
エリオにポンと肩を叩かれて、パティたちは依頼人の馬車と共に出発した。パティは最初依頼人の馬車に乗せてもらえるのかと思っていたが、馬車の中には大切な商品が入っているようで、パティたちは徒歩だった。
馬車を引く馬はゆるやかな速度で歩くが、人間の足よりはるかに速い。パティは早々に遅れ始めた。となりを歩くデイジーがしきりに心配してくれる。
「大丈夫?パティ。少し休む?」
「いいえ、大丈夫ですデイジー。休んだら皆に遅れちゃう。それにしてもデイジーも皆も足が速いですね。馬車について歩いているんですもの」
「まあね、冒険者だもの。歩いて険しい山をこえなきゃいけない時もあるし」
パティはハァッと深くため息をついた。パティは小さな頃から重いおけを持って水くみをしていたから、体力には自信があった。だが冒険者の体力と比べたら、パティはただの小娘の体力しかないのだろう。
パティの大きなリュックサックは、早々にエリオが持ってくれた。パティは気になっていた事をデイジーに聞いた。
「デイジー、皆持ち物が少ないですね?」
デイジーたちは小さめのリュックサックしか背負っていなかった。デイジーは笑って答えた。
「そうね。旅暮らしだから、極力物は少なくしないとね。それに野宿用の荷物は皆で分担して持っているから。あたしは食器類担当」
デイジーが背中のリュックサックを叩くとかシャリと音がした。
パティの横を歩くマックスとチャーミーが仕切りに鳴いている。パティを心配しているのだ。いつもはパティの肩にとまるピンキーもゆっくりと空を飛んている。パティが身につけているショルダーバッグからアクアが顔を出して、プクプク言っている。自分もバッグから出て歩くというのだ。
パティはアクアに大丈夫だと優しく言った。
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