パティとデイジー
パティはトグサたちと食卓を囲んだ。テーブルには所狭しと料理が並んだ。ビーフシチューにサラダに焼きたてのパン。これまでパティが食べたい事がないような美味しい料理があった。
トグサたちの依頼は明日からなので、パティは今夜デイジーの部屋に泊めてもらう事になった。
酒場の二階の部屋に入ると、ベッドにイスとテーブルだけのシンプルな部屋だった。
「ごめんね、狭い部屋で。ここ一人部屋だから」
「いいえ!私こそ部屋にころがりこんじゃって!私、マックスたちと床で寝ます!」
すまなそうに言うデイジーに、パティは慌てて答える。デイジーは笑って、二人でベッドを使おうと言ってくれた。
交代でお風呂に入った。パティが風呂から出ると、ベッドに座っていたデイジーが笑顔で手招きをした。パティがデイジーのとなりに座ると、彼女はパティの髪を優しくタオルで拭いて、ブラシをかけてくれた。
「パティの髪、とっても綺麗」
「綺麗?ですか?」
「うん。黒い髪ってとっても素敵。あたし赤毛のくせっけだから。パティの髪うらやましいな」
「・・・、私はデイジーのような髪が良かったです。私、村では髪と目が黒いから、気持ち悪いって言われて、忌子って言われて。私、神父さまとチコリおばあちゃん以外に、人にこんなに優しくしてもらったの初めてで、」
パティは鼻の奥がツンッとして、涙が出そうになった。初対面のデイジーにいきないこんな事を言ったら変に思われるかもしれない。デイジーが息を飲むのがわかった。パティは無理矢理笑顔を作ろうと必死になっていると、デイジーに優しく抱きしめられた。
「よくがんばったね、パティ。パティは自分の足で新しい道を切り拓いたんだよ?これからはパティにたくさん幸せな事が起きるよ」
デイジーの優しい言葉に、パティはがまんの限界をこえた。今までずっと胸の中に押し込めていたものがあふれるようにパティは泣き出してしまった。
デイジーはパティが泣き止むまでずっと抱きしめていてくれた。パティはデイジーの柔らかな腕の中でうとうとと眠りについた。
翌日目が覚めると、目の上からタオルが落ちた。どうやらパティの目が腫れないようにデイジーが置いてくれたらしい。
「パティ、おはよう」
「デイジー、おはようございます。皆おはよう」
デイジーは先に起きてマックスたちをしきりに撫でていた。パティは昨夜泣いてしまった事が恥ずかしくてモジモジしていると、デイジーがブラシを持ってやって来た。
「パティ、昨日髪の毛ちゃんと乾かさなかったから、寝ぐせひどいよ?髪をすいてあげる」
パティは言われるがまま髪をすいてもらっていると、デイジーがつぶやくように言った。
「パティは可愛いなぁ。あたし一人っ子だから、パティみたいな妹が欲しかったなぁ」
デイジーの言葉にパティは驚いて振り向いた。
「わ、私も、デイジーみたいな人がお姉さんだったら嬉しいです」
「本当?!じゃあ決まり、パティはこれからあたしの妹!お姉ちゃんの言う事聞くんだぞ?」
「はい!」
パティの元気な返事にデイジーはケラケラ笑った。
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