ジョナサンの信念

 ジョナサンは深くため息をつきながらマフサと母親に言った。


「私がパティから聞いた話しでは、マフサがパティの動物たちを焼き殺そうとしたそうです。動物たちをかばおうとしたパティを、犬のマックスが守ったのです。言わば正当防衛です」

「何ですって?!息子は薄汚い犬にケガを負わされたのですよ?!」


 マフサの母親はなおもヒステリックに叫んだ。


「お言葉ですがお母さん。私のパティは貴女の息子に、一歩間違えば死んでしまう大火傷を負わされたのですよ。私は貴女の息子の事を村長に直訴しようとしました。ですがパティが止めたのです。誰もケガしていないから、と」

「当然です!パティは村の除け者、忌子なんです。村長は息子とパティ、どっちを大事に思っているのかわかっているでしょう!」


 ジョナサンはマフサの母親を憐れむように見つめて言った。


「お母さん。貴女は何も理解していない。パティが黒い髪で黒い瞳なのは確かに珍しい。だが広い世界にはパティと同じ髪の色、瞳の色をしている人たちがたくさんいるのです。パティを忌子とさげすむ貴女たちは、迷信に囚われているだけなのです。神さまは人間たちに優劣などつけません。ですが神さまがもっとも愛する者は、他を愛し守り、敵をも許す者です。少なくとも、神さまは貴女の息子よりもパティを愛するでしょう」

「何ですって?!」

「神父のじじぃ!テメェ、黙って聞いてりゃつけあがりやがって!テメェの忌子の不始末だろ?早く俺の火傷を治せ!」


 ジョナサンは再び深いため息をついて、マフサに視線を向けて言った。


「マフサ、腕の火傷は痛いかい?」

「当たり前だろ!もうろくジジィ」

「私のパティは、マフサよりももっとひどい火傷を君に負わされたよ?だけどパティは一言も痛いとも苦しいとも言わなかった。犬のマックスと猫のチャーミーの火傷が治って良かったと言っていた。マフサ、君はこれから人を殺してしまうかもしれない危険な魔法を持って生きていくのだ。火傷の痛みを自分で理解しなさい。私は治癒魔法はしない。薬師のチコリばあさんに火傷の薬を処方してもらいなさい」


 それだけ言うと、ジョナサンはマフサと母親を部屋から追い出してしまった。マフサと母親は、大声でパティとジョナサンを村から追い出してやると叫んでいた。

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