第5話
「ほら、キスしたよ。だから、絶対に言わないでよ。」
「は?」
何がキスだよ。
全然納得しないんだけど。
「ほっぺたでもキスはキスでしょ。」
そう言われて思わずむっとする。
何でほっぺたなんだよ。
キスと言えば、普通口だろ?
落合さんは俺を無視してまた教室から出て行こうとする。
くそ。
何だよ。
ほんと、うざい。
俺はまた落合さんの左腕を掴んで、強引に自分に引き寄せた。
「・・・マジでお前、むかつく。」
軽く抱きしめた後、俺は落合さんの柔らかくて綺麗な髪を撫でて、おでこにキスをした。
驚いた落合さんは咄嗟に両手をおでこに当てる。
その顔、マジで反則だって。
「ほんと、落合さんってすぐに顔赤くなるよね。」
そう言うと、今度は頬に手を当てる落合さん。
いつも佐伯に見せる顔を、俺の前で見せてくれてる落合さんに、たまらない気持ちでいっぱいになる。
ああ、何だよこれ。
ほんと、たまらないよ。
どんどん好きになるじゃん。
「な、何すんのよ。」
「何って、キスだけど。」
俺は気持ちがバレないように、ふっと笑う。
「・・・可愛い。」
思わず本音を言葉にしてしまって、少し焦った。
けれど、落合さんは俺が焦っていることには気付かず、俺をじっと見つめてくる。
そんな風に俺を見るなよ。
抑えきれなくなるだろ。
もっと俺を拒否ればいいのに。
何なんだよ。
俺は無意識に右手で落合さんの頭を撫でる。
何で、俺を好きにならないんだよ。
何で、よりによって佐伯なんだよ。
何で。
「・・・ごめん、帰る。」
ぐいっと落合さんに身体を引き剥がされる。
もう少し、触れてたかったのにな。
「佐伯なんか、やめろよ。」
「神崎くんには、関係ない。」
落合さんはそう言うと、ドアを開けて教室を飛び出した。
温かい落合さんの熱がなくなって、身体が急に寒くなる。
ああ、俺何してんだろ。
完全に嫌われたな。
まあ、もともと好かれてはいなかったけどな。
ふいにドアの方を見ると、見慣れた奴が立っていて、目が合った。
今、俺が1番見たくない奴だと思って、ため息が出た。
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