第6話

「佐伯、どうしたんだよ。そんな所で。」





俺は教室を出て佐伯の側に行く。




廊下で突っ立ってる佐伯は、少し驚いた顔で俺を見ていた。







「学級委員の集まりがあって。たまたまここ通っただけだよ。」



「そうだったんだ。お疲れ。」



「落合さんと一緒だったんだ。珍しいな。」



「少し、喋っただけだから。別に何もないよ。」



「そっか。」






何か言いたげな顔をする佐伯。





いつからいたかな?





俺が落合さんを抱きしめる所見られたかな。






まあ、いいや。






俺は佐伯と落合さんの仲を裂くようなことは、するつもりはない。




落合さんは俺を好きにはならないからね。






「神崎、もしかして落合さんの事・・・。」





ボソッと言った佐伯に、俺はふっと笑う。






「何言ってんだよ。佐伯の好きな奴だろ?俺はお前を応援してるよ。」







本当だよ。





佐伯の事はちゃんと応援する。





少し胸が痛い気がしたけれど、そんなの構わない。



俺は別にどうなったっていいんだよ。



佐伯の為ならな。







「神崎はいつもそうやって俺に遠慮するよな。」



「遠慮なんかしてないって。じゃあ俺、部活行くから。」







制服のズボンに手を突っ込んで、小走りで廊下を走る。




佐伯はひたすら何か言いたそうな顔をしていたけれど、俺は無視した。






あいつの言いたい事はなんとなく分かる。






言わなくたって、分かるからさ。

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