第3話
「あ、あの、神崎くん?」
俺の顔を覗き込むようにして見上げる落合さん。
動揺して瞳を震わせる顔が可愛くて、少し苛めたくなる。
「落合さんって、佐伯の事好きだよね。」
「え?」
え?って。
普通、バレるだろ。
佐伯の席に座ってたんだから。
「でもさ、好きだからって佐伯の席に座ってたって事バレたらまずくない?」
俺は唇の端を少し上げて笑う。
落合さんは驚いたような顔をしながら、俺の顔をじっと見つめてくる。
「俺さ、結構口軽いんだよね。」
嘘だけどな。
俺、めっちゃ口硬いけどな。
だけど、そんな嘘なんて落合さん気付くわけないから、かなり焦り出して、少し手が震えている。
むしろ、バレた方が上手くいきそうだけど。
佐伯だって落合さんが好きなんだし。
「・・・い、言わないで。」
少し声を震わせながら小さく言った落合さん。
あ、やばい。
この人、ほんと可愛いな。
俺の事をまるで悪魔を見るような顔で見てくるけれど、じっとそらさずに見るから、俺が少し動揺しそうだ。
「俺の言う事聞いてくれたら、黙っててあげるよ。」
動揺を隠すように、意地悪な事を言う俺。
ああ、俺って絶対、好きな子苛めるタイプだな。
オロオロと頭の中で何かを考える始める落合さん。
きっと、奴隷になれとか、パシリ的な事想像してんだろ?
バカだな。
そんな事、頼むわけないだろ。
「・・・分かったよ。」
覚悟を決めたように言う落合さん。
俺はふっと笑って、ドアに付いていた手を離した。
少しだけ落合さんと距離をとって向かい合う。
「何、すればいいの?」
「キス、してよ。」
「・・・え?」
奴隷やパシリなんかよりももっと酷い事。
俺の気持ちに気付かないで、いつも佐伯の前で顔を赤くする落合さんが悪い。
俺、どんな思いで2人を見てると思ってんだよ。
キスくらい、許して欲しいよ。
「しないなら、俺バラすよ。」
「なっ・・・!」
脅迫でも何でも良い。
今この瞬間だけ、落合さんを俺のものにしたいんだよ。
「キ、キスなんて、出来るわけないよ。」
「ふーん。じゃあ、今から佐伯に電話して全部言うよ。」
俺は手にしていたスマホで、佐伯の番号を弾き出して、電話をかけるフリをした。
「え?あ、ちょっと待ってよ!!」
完全に信じ切っている落合さんが可愛くて、ますます苛めたくなる。
小さいくせに、必死に手を伸ばして俺のスマホを取ろうとする姿なんて、ほんと可愛いよ。
「あ、もしもし?佐伯?」
適当に演技をすると、ますます焦り出す落合さん。
そんなに佐伯にバレるの嫌かよ。
両思いのくせにな。
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