第2話

放課後俺は部室に急いだ。




部室に着いて、着替えようと思った時に、スマホを机の中に入れってぱなしにしていた事を思い出す。




スマホないのはまずいな。


俺、帰りの電車とかスマホないとまじで無理。


一駅だけだけど。


家に帰っても絶対いるし。





俺は鞄だけ部室に置いて、急いで教室に戻った。





俺ってほんと忘れ物多いんだよな。



成績は良いのに、バカだなぁと自分でも思う。







外に出ると、顔に冷たい風が当たって痛く感じる。





2月もまだまだ寒いなぁ。





早くあったかくなってくれないかな。



俺寒いの好きじゃないし。






バタバタと廊下を走る。




先生に見つかったら怒られるなぁと思いつつ、部活にも早く戻らなきゃと思って急ぐ。





教室の前に着いて、俺はドアを勢いよく開けた。







夕日で茜色に染まる教室に、黒い綺麗な髪が揺れる。



何で、いるんだ?





走ってきたせいで、少し息が上がってる。




少し苦しく感じて、上手く頭が回らない。






「何、してんの?」





俺は上がる息を落ち着かせながら、教室の中に入る。



じっと俺を見つめる瞳が、少し震えているように見えた。






「・・・か、神崎、くん。」






やっと俺の名前を口に出した落合さんの前に立つ。






「ここってさ、佐伯の席だよな。」





そう言うと、焦ったようにオロオロし始める落合さん。


その様子を俺はじっと見つめた。





「あ、えっと、これは、間違えたんだよ!」



「は?普通自分の席、間違えねぇよ。」



「いや、私、ちょっとぼーっとしててさ。前と後ろ間違えたんだって。」






落合さんは机に手をついて、勢いよく立ち上がり、自分の席に置いてあった鞄を手に取る。



どう考えも、わざと佐伯の席に座ってたろ。


ほんと落合さんって分かりやすい人。





「神崎くんはさ、どうしたの?こんな時間に、教室に来て。」




落合さんは紛らわすように、俺に質問して来た。


無言で机の中からスマホを取り出す。





「これ、忘れたから取りに来た。」





落合さんの前でチラチラとスマホを振る。


少し納得したような顔をした落合さん。





「そ、そっか。じゃあ私、帰るね。また月曜!」




落合さんは俺から逃げるように背を向けて、ドアの方に向かう。




何となく、俺から逃げようとした落合さんに、少しむっとしたんだよね。




落合さんがドアに手をかけようとした所で、左手を掴むと振り返った。



そのままドアに落合さんを押し付けて、両手で挟み込む。





俺は悟られないように、表情を変えずに落合さんを見つめた。

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