第26話

音が、ふわりと舞う。



私が弾くピアノの音が、静かな音楽室に響く。




私、ちゃんと、弾けてる。



体が、指が、勝手にピアノの鍵盤を弾いていく。






凄い、と思ったその時、風が、音を運ぶ。



温かくて、心地いい、あの音を。




瀬戸くんの、優しい音を。






その音が、私の弾くワルツに、綺麗に重なる。






隣で瀬戸くんが、私と一緒にピアノを弾いている。




重なり合う音と音。



まるで、瀬戸くんに包まれてるみたい。






チラリと瀬戸くんを見ると、優しく微笑んでいて。






その笑顔を見て、どうしようもないくらいに、好きだと思った。






もう、隠せない。




隠したくない。






見ているだけだなんて、やっぱり嫌だよ。





もっと、近付きたい。




もっと、側にいたい。






瀬戸くんの笑顔は、無敵だ。





どんなに自信がなくても、勇気がなくても、この行き場のない想いを、伝えてみようかなって思えてくる。





この気持ちを伝えたら、困らせてしまうかもしれない。



もしかしたら、彼女だっているかもしれない。





それでも、伝えたい。




困らせたって、フラれたって良い。




今言わないと、きっと後悔する。



この瞬間を逃したら、これから先、一生言えないと思うから。







風が、優しく背中を押す。



風の音が、私の味方をしてくれる。





頑張れと、言うように。

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