第18話

「その声、ほんとやばい。」



「え?こ、声?」







少し大人びた笑みを浮かべながら、意味が分からない事を言う瀬戸くん。



少し目尻の下がった瞳に、完全に捕らわれる。




目をそらす事が出来なくて、どうしようと戸惑う。


呼吸さえも、上手く出来ない。





数秒、無言で見つめ合った後、ふいに瀬戸くんが目をそらした。



やっと、体が自由になって、大きく息を吸う。






「・・・邪魔が来た。」





小さくボソッと言葉を落とした瀬戸くん。





その瞬間、音楽室に相応しくない大きな声が響いた。





「こぉらー!!!牧野ー!!!お前、こんな所で何やってんだ!!!」





静かだった音楽室に大きな怒鳴り声が響いて、思わず体が跳ねる。



よく聴きなれたその声に、少しの恐怖と、残念な気持ちになる。





恐る恐る振り返ると、かなりお怒りの長野先生がドアの前で腕を組みながら仁王立ちしていた。




うわ、相当怒ってるね。



そりゃ、先生がせっかく補習してくれるって言っていたのに、サボったんだもん。


怒るのは当たり前だよね。



それに長野先生って、結構短気だし。



確実に怒られるのは分かっていたけれど、本当にこんな状況になると、やっぱり嫌だね。



少しだけ、ちゃんと補習に行けばよかったと後悔した。

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