第15話

チャイムが鳴る。



まるで、瀬戸くんと過ごす時間に、終わりを告げるかのように。






「数学の補習終わっちゃったね。」






瀬戸くんの瞳が、窓から私に戻る。




補習、か。



確かに、終わっちゃったな。



きっと、長野先生、カンカンに怒ってるんだろうね。




まだまだ明日からもある数学の補習。



確実に怒られるの分かってるのに、行かなきゃいけないだなんて、憂鬱だな。





・・・あれ?



そういえば瀬戸くん、なんで私が補習あるってこと知ってるんだろう。



私、補習あるだなんて、一言も言ってないよね?



なのに、どうして?




不思議そうに瀬戸くんを見ると、見透かしたように笑った。



その笑顔にまた、ドキッと私の心臓が反応する。





「何で僕が、補習あること知ってるんだろう?って思ってるでしょ?」





思っていることを当てられて、驚いた顔をする。



瀬戸くんってば、もしかして心が読める人?!だなんて、バカみたいな事を考える。





「な、何で、知ってるの?」





そう聞くと、瀬戸くんは、風で揺れる私の髪を捕まえるように摘んだ。


そして、髪に軽くキスを落とす。



その行為に、思わず体がビクッと跳ねた。





「牧野さんの事なら、何でも知ってるよ。」






じっと見つめられて、そんな事を言われたら、私の頭の思考回路が停止しそうになる。


いや、実際何も考えられなくなっているから、きっと停止している。




パラパラと落ちていく自分の髪を、ただ見つめる。






“牧野さんの事なら、何でも知ってるよ”





ぐるぐるとその言葉がループしている。




どういう意味なのか、理解出来ない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る