第4話

「音羽!おはよう!」







音羽(おとは)と、私の名前を呼ぶこの人は、友達の由奈(ゆな)。




ジリジリと照りつける太陽の日差しで、ただでさえ暑いのに、べったりと私の腕に絡んでくる由奈に、思わず苦い顔をする。





「今日、数学の補習だって?頑張ってー!」







人ごとのように言う由奈。


そりゃ補習のない由奈にとっちゃ、人ごとなんだんだろうけど、少しむっとしてしまう。






「う、うるさいよ、由奈。」



「せっかくの夏休みなのに、可哀想に!」






ケラケラとバカにしたように笑う由奈を見て、ちょっとだけ悲しくなる。




悪いのは私だけど、そんなに笑わなくても良いじゃないと思って。




私は、今日から夏休みだというのに、一学期の数学の成績があまり良くなかったせいで、長野先生主催の数学の補習に呼び出された。



本当に、ついてない。




長野先生の事も好きじゃないし、数学も嫌い。




夏休みにわざわざ学校に来て数学の授業を受けるだなんて、頭がおかしくなりそう。






「由奈は、部活でしょ?」



「うん、そう!試合近いからね!朝から晩までずっと練習。」






あーやだやだ!と首を振りながらも、どこか楽しそうな由奈。



由奈はバレーボール部に所属していて、メンバーにも選ばれるくらい、バレーが上手い。



いつも練習嫌だと嘆いているけれど、楽しそうに部活の話をしているところを見ると、練習が嫌だなんて口だけで、本当はとてもバレーが好きなんだろうなと思う。




そんな由奈が、時々羨ましく感じる。



私にも、そんな風に何か一つのことに一生懸命になれるものが欲しい。




特に特技もないし、趣味もない私には、その何かを見つけることすら難しいけれど。

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