第3話
「な、何を言ってる、瀬戸。そんなはずは、」
「先生、代入する式、間違ってますよ。」
焦りながら長野先生は黒板を見つめて、ブツブツと考え出した。
瀬戸くんが言っていたとおり、黒板に記された答えは間違っていて、先生は気まずそうな顔をする。
黒板にちゃんと答えが導き出された後、瀬戸くんは何事もなかったかのように、机に突っ伏してまた寝始めた。
クラスのみんなが呆然と瀬戸くんを見つめる。
それと同時に、授業の終わりを知らせるチャイムが鳴り響いて、そそくさと先生は教室から出て行ってしまった。
長野先生、してやられたね。
先生よりも瀬戸くんの方が頭良いのかもって思ってくるよ。
先生が出ていった後も、ずっと寝続けている瀬戸くんを、私はじっと見つめる。
瀬戸くんは、簡単に言えば、ちょっと不思議な男の子。
学校ではひたすら寝ているし、あまり友達と喋ってるところも見かけない。
何が好きで何が嫌いかとか、趣味とか、家で何して過ごしてるのかとか、全然わからない。
けれど、彼から放たれる独特の雰囲気に、私は毎日飲み込まれている。
自然と目がいってしまう。
もっと、話をしてみたいなと思う。
もっと、瀬戸くんの事が知りたい。
そんな事、本人には、絶対言えないけれど。
だから、見ているだけ。
隣で寝ている君を、ただ見つめるだけ。
それだけでも、十分。
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