第2話

こんな日常になったのは、この春から。




高校2年生になって、新しいクラスに、瀬戸くんがいた。



席替えをして隣の席になってから、授業中いつも寝ていることに気がついた。




寝ているはずなのに、当てられると必ず答えを言える瀬戸くんは、本当に凄いなと思う。





「次、牧野。この問題解いてみろ。」



「え・・・。」






瀬戸くんを眺めていると、突然、長野先生に当てられてしまった。



咄嗟に黒板に書かれた問題を見る。



もちろん、授業なんて聞いてなかったし、数学は苦手だから、解けるわけもなく。





「どうした?もしかして分からないのか?」





少しバカにしたように先生は言う。




ほんと、長野先生ってば、性格悪い。




私が数学苦手なの知ってて、わざと当てるんだから。



特に、隣で気持ちよさそうに眠る瀬戸くんに、答えを当てられた後は、決まって私に当ててくる。





「わ、わかりません・・・。」



「牧野には、ちょっと難しすぎたかもな。ちゃんと教えてやるから、覚えろよ。」






答えられない私を見ながら、満足そうに言う先生に、思わずむっとする。




本当に、嫌な性格。



これが、教師だなんて、この学校はどうかしてるよ。






少し睨むように先生の背中を見ていると、突然むくっと顔を上げた瀬戸くん。




ちょっと驚いて、瀬戸くんを見ると、黒板を食い入るように見ていた。





「先生。その答え、3±√10ですよ。」






何のためらいもなく、そう言い放った。



瀬戸くんが言った答えと、黒板に記された答えは違っていて、焦る先生。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る