君と奏でる二重奏

第1話

最近、気になる男の子がいる。




それは、私の隣に座る、男の子。






「こら、瀬戸!いつまで寝てるんだ!起きろ!」



「・・・ん。」






ああ。



また、先生に怒られてる。



けれど、悪いのは彼。



だっていつも授業中、寝ているんだもん。






「瀬戸、この問題解いてみろ。」





数学の長野先生は、そう言って、無理やり瀬戸くんを起こしては、難しい問題をわざと当てる。


なかなか性格の悪いことをするなぁと、毎回思いながら、その光景を眺める。




問題を解くように言われた瀬戸くんは、おもむろに顔を上げた。


そして寝ぼけながら、ぼーっと黒板を見つめる。




机に突っ伏して寝ていたせいか、長めの黒い前髪が少し乱れている。




少し目尻の下がった瞳が、その前髪の隙間から見えた。



それが妙に色っぽくて、少しドキッとしてしまう。


そんな彼の横顔を、私はいつもこっそりと眺めている。








「3−√2≤x≤3+√2。」



「正解。」




さらりと答えを口に出した瀬戸くんに、長野先生は気にくわないと言いたげな顔をする。




瀬戸くんは、授業中はいつも寝ているけれど、成績は学年トップ。



どんな問題を当てられたとしても、必ず答えられるんだ。




答えを言った後、瀬戸くんは再び机に突っ伏して寝始めた。



長野先生は小さくため息をこぼすと、それ以上何も言わずに授業を再開した。

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