第4話

何してるんだろう?



いや、そんな事よりもあの表情。




学校では見たことのない、冷めきった顔をしている。




もはや水野くんじゃない人なのでは?と思えてくるけれど、どうみても水野くんそのもの。





知り合いでもないのにいきなり声をかけるのは変だし、このまま過ぎ去ってしまうのも何だか気になって出来ないし…。





どうすればいいのか分からなくて、ただ立ち尽くしていたら、おもむろに水野くんは鞄から何かを取り出した。





そしてなんの躊躇もなく、それをゴミ箱に放り込む。




あまりに驚きすぎて、時間が止まったように身体が動かない。



だって、まさかそんな…。






水野くんが今捨てたものは、あの淡いピンクの袋。



爽やかな笑顔で女の子から受け取っていた、あの袋だ。





何が起きたのか分からなくて、頭がついていかない。



けれど一つわかったことは、今まで生きてきた中で一番見てはいけないものを見てしまったということ。



これは見なかったことにするのが一番良い考えだとやっとの思いで絞り出した私は、そのまま逃げ出そうとしたのに、爽やかとは正反対の顔で私を見る水野くんと運悪く目があってしまった。



手にしていた肉まんの袋に力がこもる。




あ、まずい…。






とりあえず逃げるしかないと思って、回れ右をしてその場から駆け出すと、すぐに腕を掴まれて阻止される。



おそるおそる振り向くと、さっきまでの冷めた表情とは変わって、いつも見るあの顔。








「ちょっと、いいかな?」








そう言って水野くんは爽やかに笑う。








「…はい。」





そんな彼の雰囲気に断れるわけもなく、首を縦に振って小さく答えた。

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