第4話
何してるんだろう?
いや、そんな事よりもあの表情。
学校では見たことのない、冷めきった顔をしている。
もはや水野くんじゃない人なのでは?と思えてくるけれど、どうみても水野くんそのもの。
知り合いでもないのにいきなり声をかけるのは変だし、このまま過ぎ去ってしまうのも何だか気になって出来ないし…。
どうすればいいのか分からなくて、ただ立ち尽くしていたら、おもむろに水野くんは鞄から何かを取り出した。
そしてなんの躊躇もなく、それをゴミ箱に放り込む。
あまりに驚きすぎて、時間が止まったように身体が動かない。
だって、まさかそんな…。
水野くんが今捨てたものは、あの淡いピンクの袋。
爽やかな笑顔で女の子から受け取っていた、あの袋だ。
何が起きたのか分からなくて、頭がついていかない。
けれど一つわかったことは、今まで生きてきた中で一番見てはいけないものを見てしまったということ。
これは見なかったことにするのが一番良い考えだとやっとの思いで絞り出した私は、そのまま逃げ出そうとしたのに、爽やかとは正反対の顔で私を見る水野くんと運悪く目があってしまった。
手にしていた肉まんの袋に力がこもる。
あ、まずい…。
とりあえず逃げるしかないと思って、回れ右をしてその場から駆け出すと、すぐに腕を掴まれて阻止される。
おそるおそる振り向くと、さっきまでの冷めた表情とは変わって、いつも見るあの顔。
「ちょっと、いいかな?」
そう言って水野くんは爽やかに笑う。
「…はい。」
そんな彼の雰囲気に断れるわけもなく、首を縦に振って小さく答えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます