第3話

あれから数日経った。



一回認識してしまうと、やたらと視界に入ってしまうのはどうしてだろうか。




登下校の時、教室の窓から廊下を眺めている時、不意に視界に入ってきてしまう。



今日なんて、家庭科で作ったと思われるお菓子を渡されていた。



淡いピンクの袋に包まれたそれは、なんとも可愛らしくて。



もちろん水野くんは、あの爽やかな笑顔で受け取っていた。





そんな現場を何度か目撃していると、全く存在すら知らなかった人なのに、こんなにも存在感のある人だったんだと思い知る。









「おー風見、悪いな。」



「いえ。あとこれ、クラス日誌です。」



「助かったよ。じゃ、お疲れさん!」



「さようなら、藤堂先生。」






日直の仕事をしていたらすっかり遅くなってしまった。



担任の藤堂先生に雑用も頼まれてしまったから、さらに時間がかかった。





すっかり人の少なくなった道を一人歩いていく




夏休みが明けて少し経ったこの季節は、日が暮れてくると日によっては少しだけ肌寒い日がある。




今日は少し肌寒い日だな、なんて思って歩いていると、お腹の虫が音を立てた。




先に見えるのは通学路に唯一ある小さなコンビニ。



何か買って帰れる場所は、このコンビニだけだ。





昨日も菜央ちゃんと買い食いしてしまったけれど、お腹の虫には勝てないなと、躊躇いなく立ち寄った。






「あら、優衣ちゃん!今日も来たのー?」






声をかけてきたのは店長の圭子さん。



いつも優しく話しかけてくれる優しい人。






「優衣ちゃん、いつものでいい?」



「はい!」






まるで常連のお店のように、圭子さんはレジ横のケースから肉まんを取り出して袋に入れてくれた。



ホカホカの肉まんの香りが鼻をくすぐると、私のお腹の虫がさらに音を立てる。



圭子さんから肉まん入りの袋を受け取ると、お礼を言ってコンビニから出た。





その瞬間、見覚えのある人が視界に入って思わず立ち止まる。





コンビニのゴミ箱の前。



爽やかとは程遠い、冷めた表情をした水野くんが立っていた。

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