第17話

薬を貰って、病棟に戻ろうとした時、薄暗いロビーに映える白衣が、ゆらゆらと揺れた。




「・・・ああ。」





何で、今?と大きくため息をつく。



もう、見慣れてしまったその顔を見ていたくなくて、咄嗟に視線を逸らした。






「何してんの?お前。」



「何って。薬剤部に薬取りに来ただけっ、」



「おい、何かあった?」






ぐいっと腕を掴まれて、逸らしていた瞳を捉えられる。


じっと、真剣に見つめられて、小さく高鳴る鼓動。



何かあった?だなんて。






「別に、何もないですよ。」





津崎先生に、話すわけない。



それに、こんなところ、誰かに見られたらややこしい事になるから、本当にやめてほしいのに。


何故か津崎先生は、あたしに構ってくる。






「先生、手、離して下さい。」





少しむっとした顔で、津崎先生はあたしから手を離す。


結構強く掴まれたからか、腕が少し痛む。






「それじゃあたし、病棟戻るので。」






津崎先生を横切って、パタパタと走って病棟に戻る。



ぎゅっと、薬が入った袋を抱きしめた。





何だか、苦しくて。



こうしていないと、溢れそうだったから。





こんな姿、誰にも見せたくない。



見られたくない。





弱い自分は、大嫌い。

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