第17話
薬を貰って、病棟に戻ろうとした時、薄暗いロビーに映える白衣が、ゆらゆらと揺れた。
「・・・ああ。」
何で、今?と大きくため息をつく。
もう、見慣れてしまったその顔を見ていたくなくて、咄嗟に視線を逸らした。
「何してんの?お前。」
「何って。薬剤部に薬取りに来ただけっ、」
「おい、何かあった?」
ぐいっと腕を掴まれて、逸らしていた瞳を捉えられる。
じっと、真剣に見つめられて、小さく高鳴る鼓動。
何かあった?だなんて。
「別に、何もないですよ。」
津崎先生に、話すわけない。
それに、こんなところ、誰かに見られたらややこしい事になるから、本当にやめてほしいのに。
何故か津崎先生は、あたしに構ってくる。
「先生、手、離して下さい。」
少しむっとした顔で、津崎先生はあたしから手を離す。
結構強く掴まれたからか、腕が少し痛む。
「それじゃあたし、病棟戻るので。」
津崎先生を横切って、パタパタと走って病棟に戻る。
ぎゅっと、薬が入った袋を抱きしめた。
何だか、苦しくて。
こうしていないと、溢れそうだったから。
こんな姿、誰にも見せたくない。
見られたくない。
弱い自分は、大嫌い。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます