第16話
「ほら、キスしたよ。だから、絶対に言わないでよ。」
「は?」
明らかに納得いかないというような顔をする神崎くん。
そりゃそうだよね。
だって私は、口じゃなくて、彼の頬にキスをしたから。
「ほっぺたでもキスはキスでしょ。」
むっと機嫌の悪い顔で睨む神崎くんを無視して、私は教室から出ようした。
けれど、また左腕を掴まれて、強引に引き寄せられる。
「・・・マジでお前、むかつく。」
軽く抱きしめられた後、ふわっと頭を撫でられて、おでこにキスされた。
思わず自分の両手をおでこに当てる。
熱い。
触れられた所も、キスされた所も。
「ほんと、落合さんってすぐに顔赤くなるよね。」
おでこに当てていた手を、今度は頬に当てる。
ああ、もう。
どうしてこんなに熱いの。
自分でも分かるくらい、顔が火照っていて恥ずかしくなる。
ただ、頭を撫でられて、おでこにキスされただけなのに。
「な、何すんのよ。」
「何って、キスだけど。」
目の前でふっと笑った神崎くんは、やっぱり悪魔のようで。
「・・・可愛い。」
何、それ。
何で神崎くんがそんな事言うの。
ドキドキと胸がうるさい。
じっと見つめられて動けなくなる。
そっと神崎くんの右手が私の頭に触れて優しく撫でる。
夕日を背にしながら、私の目の前に立っている神崎くんの表情は逆光で暗くてよく見えない。
けれど、少し切なそうな顔をしているような気がした。
そんな瞳で、私を見ないでよ。
柑橘系の香り鼻をくすぐって、頭がクラクラする。
彼のシトラスの香りは、私の体を縛り付ける。
早く、逃げなきゃ。
そう、思った。
これ以上、側にいたら、何かが壊れてしまいそうで。
怖い。
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