第10話

佐伯くんの椅子を引いて、腰掛ける。



座ってから、私かなりヤバイことしてるわと思って、キョロキョロと周りを見渡す。



放課後も結構時間が経ったから、廊下の声も遠くで聞こえるだけ。


この時間に教室に戻ってくる人もいないだろうし。





そう思って、佐伯くんの机に突っ伏す。




ただの、机と椅子。


なんの変哲も無い。





だけど、彼がいつも座っている席だと思うと、胸がドキドキする。






突っ伏したまま、窓を見つめた。





グランドからは、運動部の声が聞こえてくる。





差し込む夕日の光が、教室全体を照らして茜色に染める。





放課後の教室って、良いね。




静かだし、綺麗だし。








ああ、こんなことしてるって誰かにバレたらまずいよね。


でも動けないや。


しばらく、こうしていたいなと思う。




佐伯くんはいとも簡単に私に触れるけど、私は恐れ多くて触れられない。



だからせめて、これくらいは許して欲しい。






ぼんやりと昼休みの事を思い出す。



私だったら付き合うかもって佐伯くんは言った。





本心なのか、嘘なのかは分からないけれど、そう言ってくれたことは素直に嬉しかった。





佐伯くんは、私からチョコ渡したら引くかな。



喜んでくれるのかな。





佐伯くんって、私のこと、どう思ってるんだろう。

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