第5話
「佐伯、隣のクラスの女がお前を呼んでるんだけど。」
声とともにふわっと香るシトラスの香り。
爽やかな柑橘系の香りを漂わせるのは、同じクラスの神崎くん。
彼は佐伯くんの隣の席で、比較的仲よさそうな友達。
休み時間とか、よく喋ってるの見かけるし。
「おお、ありがとう、神崎。じゃあ、また後でね。」
そう言うと、佐伯くんはドアのところで待ってる女の子の所に行ってしまった。
「あれ、絶対告白だよね。」
楽しそうにニヤニヤと笑いながら、香織が私に耳打ちをする。
私も、そう思う。
佐伯くんは、本当によくモテるなぁ。
同じクラスの女の子はもちろん、他のクラスや先輩までもが佐伯くんのことを知ってるし、告白もされる。
「こりゃバレンタインは佐伯くん、山のようにチョコ貰いそうだねー。」
確かに。
いったい何個貰うんだろうなぁ。
よくドラマとか漫画で見る、机に山盛りのチョコや下駄箱開けたらチョコが沢山落ちてくるぐらい、貰いそうだよ。
まあ、実際そんなことはありえないんだろうけどね。
でも沢山貰いそうなのは確かで。
そんな中に私のチョコが入ってても、ちゃんと食べてくれるのか不安になるよね。
「あいつ、中学ん頃から、バレンタインの時はチョコ貰わないようにしてる。」
突然私と香織にそう言ったのは、神崎くんだった。
佐伯くんに声かけた後、自分の席に座ったみたい。
彼は左手をズボンのポケットに突っ込んで、右手でスマホをいじっている。
「え?神崎くんって佐伯くんと同じ中学だったの?」
「ああ。」
「佐伯くんって、チョコ貰わないの?」
「中学ん時は一切誰からも貰ってなかったよ。」
香織は佐伯くんの席に座って、隣の席に座っている神崎くんに話しかける。
私は2人の会話を後ろで黙って聞いていた。
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