第11話
「あれ?春日井さん、また学級委員してるんだ。」
ドア付近にいる犬山くんを見ていると、前の席に座っている人に声をかけられた。
ああもう、今日は一体何なの?
やたら声かけられるんですけど。
犬山くんから目をそらして前を見る。
黒髪短髪で、ちょっと真面目そうな人。
何となく見たことあるけれど、誰だっけ?
「あ、俺のこと覚えてない?俺も去年学級委員してた、一宮だよ。」
無言でいると、勝手に名前を名乗られた。
記憶を遡って、彼の事を思い出す。
ああこの人、一宮 結翔とか言う男だったかも。
そういえば去年、学級委員の集まりにいたな。
一宮くんが私に何の用よ。
何で話しかけてくるのよ。
「あ!春日さん、なんで結翔と喋ってんのー!」
何だよ、一宮くんもバカ犬の友達か。
本当に友達たくさんいるよね。
てか喋ってないし。
「コタロウ、お前が学級委員なんて、どうしたんだよ。」
犬山くんは私の隣に座って、ニコニコ微笑んでいる。
隣に座らないでよ。
他にもたくさん席空いてるでしょうが。
でも、同じクラスの学級委員同士、普通は隣に座るよね。
一宮くんの隣にも女の子座ってるし。
「春日さんが学級委員やるって言うから、俺もやろうかなーて!」
「何だよその理由!」
あははと犬山くんが笑うと、楽しそうに一宮くんも笑う。
本当によく笑う人だよね。
ずっとずっと笑ってる。
彼が笑うと、不思議と彼の周りの人達もつられるようにして笑う。
すごい人だと思う。
犬山くんを嫌う人なんて、この世にきっといないんだろうな。
でも、こういう周りを温かくする人ほど、裏切られた時は怖い。
だから、なるべく近付きたくない。
「てかコタロウ、春日井さんは春日さんじゃないよ?」
「うん、知ってる!」
へらっと笑いながら犬山くんが言うと、一宮くんは少し呆れた顔をして笑った。
「知ってるのに何で春日さんって呼ぶんだよ。」
このバカ犬は確信犯だからね。
私を春日井と知っておきながら、春日と呼ぶという。
全然意味がわからない。
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