第9話

私の隣にぴったりとくっついて、鼻歌を歌いながら歩くバカ犬。



犬山くんは私が教室を出ると、待ってよー!と言って勝手に付いてきた。





隣でぴょんぴょんとスキップしながら歩く彼に気付かれないようにちょっとずつ距離をとる。






ああ、面倒臭い。



私がこんなにも無視しているのに、このバカ犬はそんなことは関係ないと言った様子で、私に構おうとしてくる。






うざすぎる。



本当に、うざい。








「あ!コタロウどこ行くのー?」



「俺ねー学級委員になったんだよー!すごいでしょ!」



「あはは!コタロウが学級委員とかマジウケる!」



「コタロウ、この前貸した漫画早く返せよ。」



「ごめんごめん!明日持ってくるから!」



「コタロウじゃーん!ばいばーい!」



「うん!ばいばい!!あぁっ!!春日さん、待って!!」









そしてこいつ、かなり目立つ。





教室から学級委員会の集まりがある教室まで移動するだけで何人にも声をかけられている。



オトモダチがたくさんいるようで。




私とは全く真逆の生き物だ。


目立つずに地味に生きている私とは。







犬山くんの周りには常に人が集まる。





それはもう気持ち悪いぐらいに。







ただ廊下を歩くだけで、あんなに声をかけられるなんて、みんな本当に犬山くんをその辺の犬だと思ってるんじゃないかと思うよ。






「もー春日さん!!歩くの早いよー!」






別に一緒に行ってるわけじゃないし。





あなたが勝手に付いてきてるだけでしょ。






私は無視して1人でスタスタと歩いていく。

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