第5話

着々と委員が決まっていく中、私はおでこを机に付けて再び項垂れる。


カチャと眼鏡が机に当たった。


ああ、邪魔だ。


そう思って眼鏡を取って、机に置く。






何よこれ。



こんなの私が望んでた高校生活じゃない。




私は勉強をしに高校に来たんだ。




こんなサル小屋でサルと戯れる為に来たんじゃない。





どうしてこうなったんだろう。


いや、何もかも志望校に落ちたのが悪いんだけど。





それにしても、この高校は酷すぎる。





滑り止めで受けたにしても、いろいろとおかしすぎる。






だいたいみんな勉強しなさすぎ。




授業中スマホいじるわ、漫画読んでる奴はいるわ、ちょっと勉強すれば欠点なんて絶対取らないのに欠点とる奴はいるわ。




どうなってるの!?




高校なんて義務教育じゃないんだから、勉強する気がないなら、行かなきゃいいのよ!!!



何故、金払ってわざわざ高校なんかに通ってんだか。


友達作りの為ですか?



それとも、彼氏や彼女作る為ですか?








特に私が高校生活で1番理解出来ないもの、それは恋。




恋とは一体何でしょう?






女子も男子も、あの子が好きだとか、付き合った!別れた!振られた!って騒いで。


特に女子なんかは、口を開けば恋の話ばかりだ。



恋なんてものは一時的な高揚感で生まれる感情だ。


それはそんな長く続くものじゃない。





恋なんてものはしなくても生きていけますよ。





私は絶対に恋なんてしない。




そんなもの、私の人生において必要ないから。


友達と同じくらいに。







「ねぇねぇ、春日さん。」





後ろから犬の声がするような、気がする。





「ねぇー。春日さーん!」






無視だ無視。



犬の声なんて、私には聞こえない。







「ああ、もぉ!!!」






突然ぐいっと髪の毛を引っ張られて、勢いよく後ろに頭が下がって、思わずひっくり返りそうになった。




上を向いた私の顔を、覗き込んむ男がはっきりと見える。






「何で無視すんの?」





ずいっと男は顔を近付けてきて、私と目が合う。



そんなに近付かなくても、私本当はとてつもなく視力良いから見えるんだよ。


あえて眼鏡をしているのは、もし感情が表に出たとしても、咄嗟に隠せると思ったから。






「俺、何度も呼んでるのに、何で返事してくれないの?」







何でって・・・。




それは、



私は春日さんじゃなくて、春日井さんだからだよ!!

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