第4話

「みんな、学級委員は春日井と犬山で良いかー?」



「「はーい。」」



「よろしくね!春日さん!」






1つに結んだ私の髪を後ろからツンツンと引っ張られて、思わず振り向く。




髪を引っ張るんじゃないよ!!


それと、私は春日じゃなくて春日井!!!




目の前でにっこりと微笑んでいるこの男。


黒髪で寝癖なのかピョンピョンとあっちこっちに髪が飛び跳ねている。


学ランの下に少しダボっとした鮮やかな黄色いパーカーを着ていて、なんだか目がチカチカする。


人懐っこい愛くるしい顔で、何故か存在するはずのない長い尻尾が見えてきて、ブンブンと左右に振っている、まさに犬みたいな男。






「1年間、頑張ろうな!」






いやいや。



だから私、やりたくないんだって!!





豊田さん、やりたがってたじゃん。




この犬男がやるって聞いたら、やれば良かったって言ってたじゃん!




だったら、豊田さんがやれば・・・。






「じゃあ次、風紀委員!」



「あ!あたしやりまーす!」



「おぉ!豊田がやるのか!」







ええー?!


あなたが風紀委員ですか?



風紀委員がどういう委員会か知ってて立候補してるの?


朝は挨拶運動したり、生徒の身だしなみチェックしたりするんだよ?!



まず、あなたのその姿が風紀を整えるどころか、風紀を乱してるから!!



長い作り物のまつ毛を付けて、パンダかと思うようなメイク、長くてカラフルな爪、パンツが見えそうなほどの短いスカート、明るくて巻き巻きの長い髪の毛。



ダメでしょ。




どう考えてもダメでしょ!!!






「俺も風紀委員立候補しまーす。」






立候補した男に、顔に出さずにぎょっとする。




こいつは刈谷直輝。


教室の1番後ろ、廊下側の席に座る男。



このクラスで1番チャラい男じゃないですか!!


髪は金髪で襟足長いし、学ランの下のシャツはほとんどボタンなんて止められてなくて、シャツの隙間から真っ赤なTシャツを覗かせている。


スボンもダボダボでだらしないし。


あんたも豊田さん同様、風紀を乱す人の1人でしょうが!!





あーこの学校は完全に終わりですね。




学級委員は犬だし、風紀委員はサルだし。





未来なんてない。







私は大人しく静かに勉強をして、こんなサル小屋からさっさと卒業して、大人になりたいよ。

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