第2話 さみしがり
―――――― 一年前の忘年会。
「西宮ー、お前こっち来いよ!」
「西、課長呼んでるぞ。」
「まじかー。あいつめんどくさいんだよなぁ。」
「頑張れ。あとが面倒だぞ。」
「行ってくるわ。」
「お呼びでしょうか?」
明らかに僕は怒っていた。
すると課長は僕の襟をつかんで、どこかへ連れていこうとする。
飲み会になると毎度のことで何故か僕だけがそのままトイレまで連れていかれて、
「ほら、お前も。」
と言われて連れ込まれる。
だからと言って覗いてくるわけでも、握られるわけでもないので大人しく従って用を足す。
けど、この日は違った。
課長は、僕をトイレに連れこむと、僕をドアに押付けてキスした。
少し長い様に感じたが多分本当は一秒か二秒だと思う。
直後、「誰にも言うなよ」と僕の顎から頬を片手で掴んだ。
「ふぁい…」
僕は頭が真っ白だった。
課長はそんな僕の襟を掴んでそのまま席に戻ってまた隣に座らせた。
居酒屋を出て二次会のカラオケに行っても僕を隣に座らせて離さなかった。
2時間ほどカラオケをして、
「お疲れ様でした!」と解散になったが、僕はまだ解放されない。
「西宮、送れ!」
この一言で同僚達は、苦笑いをしながら帰って行った。
僕は、そのまま凄くオシャレなバーに連れ込まれた。
「…トイレ。」と課長が席に着いてすぐに言うので、
「私も。」というと、
「馬鹿か。一人で行ける」と千鳥足になりながら向かった。
なぜだろう…寂しかった。。
あれだけ鬱陶しくて嫌な奴なのに、
凄く、突き放された気がしてたまらなかった。
数分して、課長が戻ってきて僕の横に座った。
「大丈夫ですか?」と聞くと、
「…うん。」と答えた。
僕は隣を向いて、課長の頬に触れていた。
「…うるせぇんだよ。」
「僕の心臓?」
と聞くと、
「俺の…」と答える。
「…今ね、凄くキスがしたい」と素直に目を見て囁くと、
バーテンが暗闇に消えた隙にキスしてくれた。
「…お前、今日うち泊まれ。」
「欲しい?」
「…なんか調子狂うな。」
「僕のペースでいいじゃん。ね?光。」
課長は僕を見て優しく微笑んだ。
「流星…」
「なに?」
「飲んだら帰るぞ。」
「うん。」
――――――――――――翌朝、帰ろうとしてベットから降りて服を着ようとすると、
後ろから抱きしめられた。
「どうしたの?」
「……」
「もう少しいる?」
そう聞いて振り返ってキスすると、
少し安心した顔をしていた。
僕はそのまま彼に抱き着いた。
すると、優しく抱き締め返してくれた。
「…光、好き。」
「俺も、」
―――――――――――――――。
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