第7話 読者の掟
「ガクトだ。あんたが王様?」
「おお、貴方がガクト様か。
ええ、私がこの国の国王です。
かねがね噂は聞いておりましたよ。
あの巨大ドラゴンを倒したとか。」
「えっ?誰でも倒せるだろあんなドラゴン。」
「いやいや、無理ですよ⁈
あれは熟練の騎士でも倒せない魔物何ですよ。」
「そうかあ?弱かったけどな。」
「いやはや凄い方だ。是非うちの王国の騎士になりませんか?」
「ええー、俺目立ちたくないからやだ。」
「そうですか。
やはりガクト様は普通の人とは違いますね。」
「じゃあ俺デートに行くからバイバイ。」
___
「ふうー大変だった。」
「お疲れ様です、王様。
しかし無礼な奴でしたね。一応は目上の人に対してろくに敬語も使わないとは。」
「まあ異世界物の主人公で敬語を使える奴なんていないからな。」
「一応、前世ではブラック企業で働いていたという設定のはずなのにおかしいですね。
ブラック企業なら敬語とか使わないと怒られそうですが。」
「馬鹿だな。
敬語がろくに使えないからブラック企業にしか入れないんだよ。」
「なるほど。
しかし主人公、結構なすっとぼけをかましていましたね。いわゆる無自覚無双系ですね。」
「謎に需要のあるあれだな。」
「僕はあれがあんまり好きじゃないんですよ。
強さに対する責任が無さすぎませんかね。
大いなる力には大いなる責任が伴う。
この言葉を教えてやりたいです。」
「それは私もそう思っている。
だが自分の力を自覚していない方がかっこいい
と思うやつは一定数いるんだ。
需要があるから供給もある。この世の理だ。」
「確かにそうなんですが、
そもそも無双系とかって見てて面白いんですかね。努力というものが介入する余地がないというか、何の苦労もせず得られる勝利に読者は快感を覚えるのでしょうか。」
「覚えるんだろう。
いくら努力しても結果が実らない。
そんな人生を歩んでいる奴らが主人公の勝利に結果に自分を重ねる。
そうすれば主人公の勝利や結果がまるで自分の物かの様に感じれるんだ。
主人公が努力をせずとも努力は読者が自身でしている。」
「はあ、だから異世界物が流行っているんですかね。
何をしても上手くいかない人生を何もしなくても上手くいっている人生に重なるんですね。」
「ああ、そういうことだ。」
「何だか悲しいですね。」
「いつかそういう物に頼らなくてもいい日が来ると良いな。」
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