第4話 水晶割りの掟

この会話から10年後

主人公ガクトは15の歳を迎えた。

という事で、


「ガクト、お前をこの家から追放する。」


「何でですか?お父さん。」


「何故?逆にどうしてお前をここに置き続けなければならない?

黒髪のお前が産まれたせいでこっちはずっと

大変だったんだ。

近隣住民から噂され続けなければならない

こちらの身にも慣れ。

とにかくこの家から出ていけ。」


「分かりました。」


___

王宮

「今、バーガンディ家から連絡がありまして、

無事ガクトを追放できたそうです。」


「そうか、良かった。

いや、しかしこれまで大変だったな。」


「ええ、24時間あいつを見張ってましたからね。

あいつが物を手に乗せ呪文を唱えれば

付けておいた糸を引いて物を浮かせ、

あいつが暗い部屋で呪文を唱えればすぐに

ライトの光を点けたりと大変でした。」


「まあ、これからはそんなチマチマした呪文は使おうとしないだろうから

偽装工作も簡単だろう。」


「そうですね。

ちなみにあいつは早速、冒険者ギルドに行きましたよ。」


「だろうな。異世界転生物の主人公は

何故だか必ず冒険者になろうとするからな。」


「冒険者と言えば聞こえは良いですが実際は

命懸けの日雇い労働者ですからね。

そんなのよりも王国の騎士とかになった方が

よっぽど良いと思うんですけど。」


「そんな事したら騎士団の人間とか上下関係

とか面倒くさい物も書かなきゃいけないだろ。

それだったら少し不自然でも自由な冒険者に

させた方がいい。」


「大人の事情があるんですよね。」


「面倒くさいが大人の事情か、

ところで冒険者ギルドの建設は大丈夫だったか?

前回の主人公が壊したせいで新しく建設しなきゃいけなかっただろう。」


「ええ、結局間に合わなかったので

所々、絵とかで誤魔化しました。

当然奴は気づきませんでしたがね。」


「で、お決まりのあれもやったんだな。」


「スキル鑑定の際の水晶破壊ですね。

もちろんです。

やらなきゃ異世界転生物の存在意義すら危ぶまれます。」


「スキル鑑定で水晶が割れるというのは意味がわからないがな。

しかし今回はどうしたんだ?また爆弾か?」


「今回は近距離のため爆弾は危ないという事になり違う方法にしました。

まず、部屋の温度を極度に下げておいて

主人公が水晶に手を当たるタイミングで

横から光を当ててます。

すると光の熱により水晶の体積が膨張するので、それで水晶を割りました。」


「それは、大変だったな。」


「はい。相当数実験をやりました。」


「まあ、これで晴れて主人公は冒険者になったし良かったな。」


「ところで主人公は冒険者になって何をするつもりなのでしょう。」


「理由なんてない。」


「え?」


「理由なんてないさ。

冒険者にすれば作者が展開を書きやすい、

ただそれだけだ。」


「他の小説を読んでいるとたまに特に理由もなく冒険者をやっている主人公がいますが、

あれはそういう事なんですね。」


「せめてそれっぽい理由くらいはつけて欲しいがな。物語を読んでいて

主人公が何のために冒険者をやっているのか

よく分からない。

となると必然的にその物語を読む理由が無くなり読者が離れる。」


「それは困ったものですね。」


「それで困るのは作者自身だから

まあいいさ。」




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