第2話 スキルの掟
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バーガンディ家 庭
「おい、ガクト。
忌子はあっちにいってろよ。
邪魔なんだよ。」
「ごめんユーラトル兄さん。」
「ちっ、黒髪が。」
「ユーラトル様。
旦那様がお呼びです。」
「分かった。すぐ行く。」
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バーガンディ家 居間
「ご苦労。」
「父上もお勤めご苦労様です。」
「ユーラトルの方が大変だろう。
すまない、汚れ役をさせてしまって。」
「いえ、何のことはありません。
ほんの少し、汚い言葉を吐くだけです。」
「そうか、だが大変なのはまだまだこれからだ。」
「分かっております。」
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バーガンディ家 メイド部屋
「旦那様もあの子が産まれてから
ずっとやつれてらっしゃるわね。」
「仕方がないわ。
自分の子供に憎まれ役をやらせなければいけないんだもの。
あの子が産まれてからずっとユーラトル様は
嫌なのを我慢されながらあの子に罵詈雑言を吐いていらっしゃるのよ。」
「奥様も可哀想に。
我が子の誕生を楽しみにしていたのに、
そろそろあの子が前世の記憶を思い出す頃でしょう。
私だったら気持ち悪くてしょうがないわ。
だってある日我が子の中身が変わるのよ?」
「無駄話はこれくらいにしましょう。
あの子の挙動をしっかり見てないと。」
「そうね、いつ前世を思い出すか分からないものね。
それに前世を思い出すと同時に"あの事"も
思い出すでしょう。
考えるだけで嫌だわ。」
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王宮
「王様、大変です。
遂に主人公ガクトが記憶を取り戻しました。」
「なんと、遂にか。」
「ええ、来てしまいました。」
「という事は、あいつは自分が"スキル"を転生の際に貰ったことも思い出したという事か。」
「あの扱いずらいやつですね。」
「その通りだ。
作者はいつも主人公に"スキル"という物を与えている。
この"スキル"は普通の人間には出来ない事が出来る力。
上手に使えば話を面白くするのに便利だが…」
「あの作者、
前回強大すぎるスキルを主人公に与えたせいで
特に山場が無くなって小説を打ち切りにしてますからね。」
「前回の主人公は結局どうなったんだったかな?」
「間違えて爆裂魔法を自分に向かって放って死にましたよ。」
「スキルは強いが頭は弱かったな。
今回の主人公のスキルはなんだ?」
「それが…ありません。」
「なんと言った?」
「作者が言っていました。
今回は主人公に何のスキルも与えていないそうです。」
「どういうことだ?
あの作者がスキルも無しに物語を面白く出来る訳がないだろう。」
「私もそう思いそう言ったんです。
そしたらアイツ
(いやー俺、スキル考えるの面倒くさくなっちゃった。
前回は万能チートのせいで出てくる困難、
全部すぐに解決しちゃったんだもん。
そしたら面白くなくなっちゃった。
だから主人公には何もスキルを与えなかったよ。
取り敢えず読者には最強チートスキルって言っておくからさ
主人公になんのスキルも無いことは隠しつつ
君達で良い塩梅で物語を面白くしてね。じゃあ)
って言って…」
「あいつめ、
しかしそういう事ならガクトと協力すれば
良いんじゃないか?
あいつも自分がスキルを持っていない事を知っているだろ。」
「いえ、彼は知りません。」
「は?」
「主人公は自分が"スキル"を、
しかもチートスキルを持っていると思っています。
作者の野郎、女神からチートスキルを貰うという展開をわざわざ入れたんです。
そのせいで主人公はスキルを貰ったと勘違いしています。
実際は主人公に眩しい光を当てただけで何もしていません。
しかも厄介な事にあの主人公、
自分の力だけでは何も出来ないくせにプライド
だけは一丁前にあります。
チートスキルを貰っていないと気づいたらおそらく拗ねて何もしようとしなくなります。
なんとか誤魔化さないとただでさえ展開の遅い物語が更に進まなくなってしまいます。」
「じゃあ何だ?
我々は読者にありもしないチートスキル使用場面を見せつつそれを主人公にバレないようにしないといけないのか?」
「残念ながらそうなりますね。」
「なんという事だ。
今日ほど絶望した日は無い。」
「作者が一気に物語の月日を30年進めた時と良い勝負ですね。」
「あれは別格だ。」
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