ラナススイーレ様へ

 ヴィリディス神聖国何とかリア歴一二一〇年。法皇ライファセⅣ世猊下の御代にて十二年。セルクゲス陛下の御代にて二十四年。唯一神ヘリアンサスの慈悲は……ないんじゃないかなぁ?


 ……前口上はさっぱり上達しませんけど、神聖国はむしろ国が下手になっているので、この口上もかなりどうでもよくなってる気がします。それなのに時間だけはきちんと進みますね。


 実はこの手紙は年が明けてから届くという事なので、勝手に時間を進めた挨拶になってます。書いてしまえば、時間も思うが儘です。


 スイーレ様の噂は神聖国ではあまり聞かなくなりました。やっぱり東の果てに行ってしまうと、どうしようもない部分もあるのでしょうね。

 ですから今回は私からたっぷりと。


 新派と旧派の諍いはますますひどくなっています。私は商人のお手伝い、という身分で相変わらずウルサウェイトいるんですよ。

 どうも争いに巻き込まれないようにするには、この都市がギリギリみたいですし。


 新派が押さえているので、商人のふりをしている分には、比較的自由ですしね。

 その上で旧派の情報も入ってきます。悪口をたっぷりまぶしながらなので、かなり歪んでいるとは思いますが、そういう前提があれば歪んだ情報でも物語の要素にするのはフェアなんじゃないかと。


 ただ旧派の中で、また分裂、というか派閥争いが生じているのは確かなことのようです。海洋国に近い南のヘリドゥヌムという都市では、今まで以上に血が流れているみたいですね。


 つまり殺人が近くにある、という状態が神聖国の日常になる可能性があり、そんな状況で推理小説ミステリーが人の心を捉えるのか?


 ……といった部分に悩めるほど、割とよゆーです。


 ただ殺人を中心にしちゃうと不利なのかも。

 でも、今考えてるものはスイーレ様はお嫌いになられるような気もするんですよね。


 ――そんなわけで、予定通り取材を続けたいと思います。旧派の方が偏ってる気はしてるんですけどねぇ。 


 ウルサウェイトにて。


                      ケーラッハ・テイワス

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