第4話

「ふわぁ〜〜おはよう、ぶーちゃん……。」

大きな欠伸をした瑞希は、ふわふわもちもちのぬいぐるみのぶーちゃんに挨拶をする。

結局、胸がドキドキして何度も夜中に目が覚めてしまった。

「あまり眠れなかった……。これが恋煩い?」

少女漫画でよく見るやつかなとボンヤリしてると、下の階から母親に呼ばれる。

「瑞希〜!そろそろ起きないと、朝ご飯食べられないよ!」

「はーい!」

勢いよく布団をめくり、そのままの流れで制服に着替える。

リボンを通してパチりと止めると、学生用カバンとジャケットを腕に持って下に降りた。

「お母さん、お父さんおはよう。」

「ああ。」

「おはよう、瑞希。」

テーブルの上には、トーストとスクランブルエッグとソーセージがお皿の上にあり、イチゴジャムが目に入った瑞希は、それをトーストに塗ると「いただきます。」と齧り付いた。

「瑞希、お昼ご飯今日はお母さん作れたから、それ持って行ってね。」

「えー!忙しいのにありがとう。」

「ううん。じゃあ行くわね!行ってきます。」

「行ってらっしゃい〜!」

「じゃ、お父さんも行くから。」

「はーい!行ってらっしゃい〜!」

忙しい両親を見送ると食卓にはテレビのアナウンサーの声がリビングに響く。

最初は少し寂しい気持ちもあったが、慣れるとなんて事なくなってしまった。

それに今日はお母さん手作りのお弁当もある。

お昼ご飯を類と食べるのが楽しみな気持ちで今はいっぱいだ。

「ご馳走様でした。」

両手を合わせてから食器を流しに置くと、Yシャツの袖口を捲り、スポンジを泡立てて洗い始めた。

食器を洗い終えると、洗面所に向かい長い髪の毛を整えて顔を洗い歯を磨く瑞希。

「よしっ、準備できた!」

Yシャツの袖を元に戻し、ジャケットを羽織り、お弁当と学生用カバンを持ち、家を出る。

足取り軽く鼻歌を歌いながら最寄りの駅まで向かう。

毎朝の通勤ラッシュに揉まれながら、六駅先の高校を目指す。

高校の最寄りに近づくにつれて、少しだけ余裕のある空間に変わり、瑞希は外を眺めるこの数分間が好きだ。

高校の最寄りの改札を出ると見覚えのある長身の男子生徒が立っている。

「あれ、類くん?」

「あ、不破さんおはよう。」

「おはよう。誰か待ってるの?」

「うん、不破さんを待ってた。」

「えっ!?約束はお昼ご飯からじゃなかった?」

「うん。でも、なるべく一緒にいようって話してたら、朝から会いたくなったんだ。」

そう言って微笑む王子様は、朝からなんて爽やかなんだろう。

「ぐっ……。(少女漫画で読んだやつ……!!!!)」

「不破さん?大丈夫?」

「だ、大丈夫です……!こちらの話です!」

「そう?じゃあ、行こうか。」

「う、うん。」

そう言うと歩き出した二人の間には微妙な距離が出来ていた。

「不破さん、俺歩くの早い?」

「いや、隣に並んで歩いていいのか分からなくて……。」

「いいでしょ、付き合ってるんだから。」

類に手招きされた瑞希は、おずおずと隣に並んで歩く事にした。

「おっ、お二人さんおはよー。」

「拓海くん、おはよう!」

「……おはよう、拓海。」

「おっ?何かいい感じじゃん。二人とも。俺、花の事バス停まで迎えに行くからじゃーな!」

走って行ってしまった拓海の背中に向かって手を振る瑞希の手を取る類。

「へ?」

「何で拓海呼びなの?」

「去年は同じクラスで自己紹介の時に、拓海って呼んでって言ってたからかな?類くんもそうだったよね?」

「まあ、そうだけど……。」

頭をかいて不満そうな顔をする類。

「類くん、どうしたの?」

「これ言うとダサくなるんだけど……、ちょっと嫉妬した。」

「えっ。」

「あんなに可愛い顔で俺以外の人を呼ぶの、ちょっと悔しい。」

顔からボンッと火が吹き出しそうなくらい、真っ赤になって固まる瑞希。

「かわ、可愛くはないですが、嫉妬してくれて嬉しい……です。」

「……悔しいからこのまま手を繋いで学校行くか!」

手を握りしめられて走り出した類につられて一緒に走り出す瑞希。

「えぇっ!?ちょっと待って類くん!」

「待ーたーなーいー!」

二人は仲良く学校へと走り出した。

ちなみに拓海くんは、花ちゃんを迎えに行くのも本当ですが、類くんが不機嫌なのを察知していました。



続く

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