第3話
お風呂から出て自室に戻った時に、机の上に置いていたスマホが振動した事に気が付いて、瑞希は慌てて電話に出る。
「も、もしもし?」
「あ、不破さん?良かった出てくれた。」
「類くんどうしたの?」
夜に男子から連絡など貰ったことの無い瑞希は、それだけで胸がドキドキした。
「明日、一緒に帰りたいなと思って電話したんだけど……。」
「明日!わ〜嬉しい!うん、一緒に帰る!」
「良かった……。じゃあ、お昼ご飯はどう?」
「うん、いいよ〜!」
「ありがとう、不破さん。……俺今すっごいドキドキしてる。」
「……私も。……これが恋なのかな?」
「……どうだろう?でも、ドキドキはしてる。」
瑞希は胸に手を当てて、自分の心音の大きさとあまりにも早いそのスピードに驚いた。
答えが出ない問に、恋を知るのはまだまだ先になりそうな二人だった。
「ふふっ、やっぱり恋って分からないね。」
「そうだね。このドキドキも断られたらどうしよう。って、気持ちから来てるのかもしれないからね。」
「あー!それはあるかも。」
「うん。……ねえ、これからは毎日出来る限り一緒にいない?」
「へっ!?」
「ほら、その方が恋を分かるかもしれない。」
「あ〜、なるほど。うん、そうしよう!」
「決まりだね。じゃあ、また明日。」
「うん!おやすみなさい。」
「おやすみ。」
瑞希の耳に通話が終了した音が聞こえてきた。
「きゃ〜!」
瑞希は勢いよく、ぼすんっとベッドに寝転んで顔を枕に埋める。
バタバタと足を動かしてから、ぬいぐるみを思いっきり抱きしめた。
男子との二人きりの約束などした事がない瑞希はそれだけで舞い上がっていた。
「これはドキドキだよ〜!どうしよう〜!」
「(類くんはどうなんだろう。明日、手とか繋いじゃったりするのかな?)」
想像するだけで顔中に熱がこもる瑞希は、一旦落ち着く為に部屋の窓を開けて、空気を入れ替える事にした。
瑞希の長い髪を揺らす心地の良い風がふわりと頬を撫でる。
目を瞑ってしばらくの間、夜風に当たることにした。
「ふぅ……。落ち着け落ち着け。」
抱きしめたままのぬいぐるみに顔を埋めて、数秒数える。
「……ぷはっ!うん。少し落ち着いたかな。」
ゆっくり立ち上がり窓に近づくと、夜空を眺めてから窓を閉めた。
明かりを消してベッドの中に潜り込むと、ぱちぱちと何度も瞬きを繰り返す。
ふわふわと夢を見ている様な、明日になったら全てが嘘だったんじゃないかと思ってしまう。
なかなか寝付けなくて、ベッドの中でゴロゴロと寝返りを繰り返す。
「これが恋の始まりだったりする……?」
呟いた独り言に答えが返ってくる事はなく、ようやく瞼が重くなってきた瑞希はそのまま目を閉じた。
続く
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